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線量率の変動比較・第4回 (2011/10/23)

放射線測定器・ガイガーカウンターは,その感度や内部の計算ロジックの都合上, 線量率がふらついて表示されることがあります.

そこで,7機種で安定度を調べました.

TERRA-P と TERRA-BT(黒Bluetoothモデル) については@contaxndigitalさんから, RD1008については 晴れなん堂 さんから,PM1703MO-1Bについてはたろうまるさんからそれぞれ測定器をお借りしました.
ありがとうございます.

測定方法

品川区五反田のマンション中層階の窓際で,カーペットの上に測定器を並べて, それぞれの線量率を確認しました.

今回は動画撮影をして,後で動画を見ながら数値を読み取ったため, Polimaster機種は少し立てた状態で測定しました.

測定時間は2時間です.

測定機種と測定結果

測定機種と,その特性をまとめると以下のようになります.
測定結果は,2時間での結果なので,かなり誤差が少ない結果となっています.

機種名 測定タイプ 感度
(cpm/μSv/h)
時定数・サンプリング時間 測定結果
RAESystems DoseRAE2 時定数? 不明 不明 0.092 ± 0.001μSv/h (±1.0%)
Polimaster PM1703MO-1B 積算?移動平均? 6000 0.050 ± 0.000μSv/h (±0.7%)
テクノAP TA100U 時定数 800 60秒 0.055 ± 0.003μSv/h (±5.8%)
TERRA-BT(黒Bluetooth) 一定誤差 132 0.080 ± 0.002μSv/h (±1.9%)
堀場 PA-1000 Radi 移動平均 2000 60秒 0.048 ± 0.001μSv/h (±1.6%)
RADEX RD1008 移動平均 100~300? 2分48秒 0.079 ± 0.003μSv/h (±3.2%)
TERRA-P 一定誤差 132 0.080 ± 0.001μSv/h (±1.5%)

移動平均タイプというのは,一定時間ごとの数値を表示するタイプです.
一定時間は利用者が選択できたり,線量率に応じて自動選択される場合があります.

時定数タイプというのは,アナログ的な計算で直近の測定結果を重視するタイプです.
時定数の時間が経過すると約63%変化し,2倍経過で86%,3倍経過で95%まで変化します.

積算タイプというのは,線量率が変化したと検知しない限り,より長時間の測定結果を元に正確な数値を表示しようとするタイプです.
こちらは移動しないときは正確な数値が読み取れる反面,移動しながら使う場合は,表示されている線量率がどの範囲の測定結果なのかわかりにくいという欠点があります.

一定誤差タイプというのは,計測値の誤差が一定になるように,計測時間の方を調整するタイプです.

DoseRAE2については,時定数タイプで自動選択される機種だと思いますが, 細かい条件がマニュアル等に記載されておりませんので,?付きで記載しました.

Polimaster PM1703MO-1B については,移動平均なのか積算なのかはっきりしないため,?マーク付きで記載しました.

全機種測定結果グラフ


※機種毎にグラフの表示をON/OFFできます
DoseRAE2 PM1703MO-1B TA100U TERRA-BT PA-1000 Radi RD1008 TERRA-P

機種毎の測定結果の詳細

各機種の測定結果とグラフです.
グラフ下のリンクをクリックすれば元データを確認できます.

RAESystems DoseRAE2


元データ

時定数が不明ですが,おそらくかなり長めの時定数を持っているのだと思います.
±0.01μSv/hの範囲で安定しています.

Polimaster PM1703MO-1B


元データ

高感度の機種です.
Polimaster製品は積算タイプのものが多いのですが,この機種は少し違うのではないかという印象です.
途中少し外れた数値が2回ほど記録されています.
ただ,高感度であるためか,ほとんど0.05μSv/hのみ表示して,安定度は高いです.
この機種なら,1分おきに3回くらい読み取れば十分な精度で線量率を知ることができると思います.

テクノAP TA100U


元データ

(前回と同じコメントですが…)
かなりばらつきがあります.
800cpm/μSv/h の感度にしてはばらつきが大きいので, CdTe素子の扱いにくさの問題などがあるのかもしれません.
線量率の測定をする場合は,多めに平均を取らないと安定した結果が得られないようです.
分解能の高いスペクトル用の測定器と考えた方が良いのかもしれません.

TERRA-BT(黒・Bluetoothモデル)


元データ

積算タイプのアルゴリズムのようです.
電源投入直後から測ったため,最初は少し外れた数値です.
(測定開始直後は0表示されます)

画面に誤差も表示されるので,その場での線量率を正確にするのには便利だと思います.
徐々に高めになっているのは,たまたまなのか,電源投入直後は少しずれるのかはわかりません.

堀場 PA-1000 Radi


元データ

ばらつきはありますが,ほぼ±0.01μSv/hの範囲です.
他機種と違い,この機種は小数点以下3桁まで表示しますので, グラフ上では点がばらついていますが,0.01μSv/h単位に四捨五入した数値で考えれば, かなり安定していると言えると思います.

RADEX RD1008


元データ

サンプリング時間が2分48秒と長めですが,そのおかげもあってかなり数値は安定しています.
ほぼ±0.01μSv/hの範囲で,たまに±0.02μSv/hの範囲まで出る感じです.

TERRA-P(黄色モデル)


元データ

電源投入直後から測ったため,最初は少し外れた数値です.
(測定開始直後は0表示されます)

おそらく積算タイプなのではないかと思います.
±0.01μSv/hの範囲になっており,かなり安定しています.

まとめ

2時間程度かけて測定しましたが,1回だけの測定ですので,結果はたまたまという可能性もあります.
それでも,結構機種毎の違いなどが見えたのではないかと思います.

以前の測定結果も合わせて参考にして頂ければと思います.


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