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ガイガーカウンター ECOTEST TERRA Bluetooth(黒) レビュー

@contaxndigitalさんから ECOTEST TERRA Bluetooth をお借りすることができました.ありがとうございます.
ECOTEST TERRA Bluetooth の使用感などをまとめてみました.

一緒にお借りしたTERRA-黄Pのレビューもありますので,あわせて見て頂ければ幸いです.

ECOTEST TERRA Bluetooth について

ECOTEST TERRA Bluetooth はガイガーミュラー管を使用した放射線測定器(ガイガーカウンター)です.

特徴としては,

β線の計測が可能
GM管の部分にカバーが付いており,カバーを外すことでβ線を測定可能です.
ただし,検出できるβ線は0.5MeV~となっていて,パンケーキ型のGM管の機種に比べると, 高いエネルギーのβ線に限っての検出となります.
誤差表示
計測した数値と同時に,誤差が表示されます.
表示されている線量率にどのくらいの誤差があるのか確認できます.
比較的長い時間を掛けて安定した線量率を表示
GM管は感度が低いため,低線量では数値がふらつきやすい傾向にあります.
TERRA-P は線量率が変動しなければ,長い時間を掛けて線量率を求めるロジックとなっているようで, かなり表示される線量率が安定します.
ある場所にとどまって,その場の線量率を測る場合は,数値が読み取りやすく使い勝手が良いと思います.
誤差表示により,どのくらい確からしい線量率なのかも確認できます.
メモリ機能
ボタン操作で,そのときの線量率を記録し,後で表示させることができます.
Bluetooth通信
Bluetooth通信で,PCに線量率を送ることができます.
ただし,動作環境を整えるのが大変かもしれません.特定のBluetoothデバイスじゃないと駄目なようです.

内容物

お借りした ECOTEST TERRA Bluetooth の大きさは次のような感じです.
TERRA-P と比べると大きめの箱に入っています.

箱の中には,保護用のカバー,CD-ROM,マニュアルが入っています.

裏側には電池カバーと,GM管のカバーがあります.
それぞれ開けた時は次のような感じです.

大きさの比較です.
DSiより小さいくらい.

堀場 PA-1000 Radi・TERRAのBTモデルとのサイズ比較は次のような感じです.
実際に持つと,細身なせいか,写真以上に小さい印象です.

測定モード

測定モードを切り替えると,次のように画面が変化します.

まず,最初の3画面は「γ線線量率」「γ線積算線量」「β線粒子束密度」の画面です.

γ線線量率では,線量率の他に,統計誤差,アラーム閾値,時刻が表示されます.
γ線積算線量では,積算線量が表示されますが,最小単位が0.001mSv=1μSvとなっています.

β線粒子束密度では,β線の測定を行いますが,その前にγ線線量率で測定していた値を利用して差分を計算するようになっています.

残りは,「時計」「タイマー」「PC通信」「保存値の参照モード」です.
保存値の参照モードは,1つも測定値を保存していないときには表示されません.

電源投入後の様子

電源投入後の様子を撮影しました.

徐々に誤差が小さくなり,線量率が正確になっていくタイプです.
TERRA黄モデルに比べると,比較的すぐに線量率が表示されます.

γ線測定

TERRA は計り始めた後,線量が変化しなければ長い時間を掛けて,より正確な数値を出すタイプです.

測定時間が長くなるほど,徐々に誤差が減っていき,安定した(平均的な)線量率が表示されるようになります.

感度

放射線を検出したときのピッという音を数えて,表示された線量率と,時間から感度を逆算してみました.
3回測定して,144,159,158cpm/μSv/h でした.

数え間違いなどもあると思いますが,だいたい150cpm/μSv/h程度の性能があるようです.

計測時間

TERRA-BT は,暫く測定すると誤差の%の点滅が止まります.
TERRA-P も同じロジックで動作していて,TERRA-P の場合は線量率の点滅がとまります.

この誤差の%の点滅が止まる時間を,いろいろな線量率で調べてみました.
低線量では3分前後かかりますが,1μSv/hでは1分弱,2.5μSv/hで30秒くらいになるようです.

線量と誤差

誤差の%の点滅は,線量率毎に定められた誤差になったときに止まるようになっています.
同じようにいろいろな線量率で調べたところ,以下のようになりました.

目標誤差自動設定時に,誤差がどのくらいになった時に点滅が止まるかは, TERRA-BTマニュアルの別添Bの「Main relative permissible error limit」というグラフに相当します.
上記の結果も添付グラフと一致していました.

目標誤差の手動設定

デフォルトでは,線量率に応じて点滅が止まる誤差が変化するようになっています.
どのくらいで点滅を止めるかは,設定で変えることができます.

誤差を設定すると,点滅が止まる以外にも影響がありそうです.
おそらく,以下のようなロジックになっていると思います.
目標として設定した誤差以下になった場合,線量率が同じくらいなら継続して計り,誤差を小さくしていきます.
線量率がずれた場合,誤差を目標値くらいまで維持できるように,過去の統計を削除するのではないかと思います.

こちらについては下の方に検証結果を記載しました.

γ線反応速度

複数の密封線源を近づけたときの反応の様子を撮影しました.

上の動画はセシウム線源,下の動画は複数線源を近づけています.
近づけてアラームが鳴った後,線源を遠ざけてもなかなかアラームが鳴り止みません.
一度高い線量になると,すぐには下がらないロジックになっているようです.

すぐにアラームを止めた場合は,モード切替をすれば止まります.

β線測定

測定方法

β線を測定する場合,以下のようにします.


β線測定モードでは特に表示などありませんが,直前のγ線線量率モードの数値を利用しています.
GM管は,β線やγ線を区別できませんので,カバー有りでγ線のみを計った後,カバー無しでβ+γ線を計り,そこからγ線の分を引き算することでβ線量を求めます.

測定時は,β線測定モードにするのと,本体裏のカバーを外すのをなるべく手早く行う方が誤差が少なくなります.
本体を動かさないとカバーを外せない場合もあると思いますが,なるべく短時間で行い,元と同じ場所に置くようにします.

目標誤差の手動設定

β線の測定でも,γ線と同様に,目標とする誤差を設定できます.

測定例

身近なところでβ線の測定をいくつか行ってみました.
γ線・β線それぞれ5分ずつくらい測定しました.

サムネイルをクリックすると測定場所の写真が大きくなります.

(後日もう少し測定例を追加したいと思います)

測定場所 γ線測定値 β線測定値 コメント
鉛ブロックの上
1回目:
0.07μSv/h
誤差29%
2回目:
0.06μSv/h
誤差28%
1回目:
2~3/cm2・min
誤差25%
2回目:
0/cm2・min
誤差28%
β線が無ければ,ちゃんとゼロになるか確認するために, 鉛ブロックの上で測定しました.

1回目は,2~3の数値が出たので,もう1回計り直したところ0になりました.
放射線のばらつきで少し数値が出たのだと思います.
昆布
0.08μSv/h
誤差25%
2/cm2・min
誤差22%
乾燥昆布を測定してみました.
昆布にはカリウムが含まれているため,そのβ線を検出できたのだと思います.
やさしお(180g×3)
0.12μSv/h
誤差22%
19/cm2・min
誤差18%
カリウムを多く含むやさしおを測定しました.
こちらははっきり分かるほどβ線が検出されています.
γ線量も少し高くなっています.
GM管カバーがβ線を完全に遮蔽できていないか, 制動放射(β線が他の物に当たったときにX線(=γ線と一緒)がでること)のせいだと思います.
3月に使っていた吸気口フィルタ
0.20μSv/h
誤差19%
8/cm2・min
誤差17%
花粉がキャッチできるフィルタを部屋の吸気口につけているのですが, 3月頃に使っていたフィルタを交換後保存しておいたものを測定しました.
結構放射性物質が付着しているようです.
ストロンチウム(Sr-90)線源
0.30μSv/h
誤差15%
1221/cm2・min
誤差13%
線源を置く前は0.07μSv/hを示していました.
β線がかなり高い数値になりました.
Sr-90はβ線しか出しませんが,γ線が増えたのは制動放射(β線が他の物に当たったときにX線(=γ線と一緒)がでること)のせいだと思います.
セシウム(Cs-137)線源
0.30μSv/h
誤差15%
348/cm2・min
誤差15%
セシウム137線源を測定しました.
セシウムのβ線は最大で0.514MeVなので,0.5MeV~のTERRAではあまり計測できないかと思ったら,意外と反応します.
実際の所は0.5MeVより下でもある程度の感度があるのかもしれません.

PC通信機能

付属ソフトウェアは,32bit非対応のようです.
Windows7 64bit 環境では動きませんでした.

Windows Vista 32bit ではインストールができたのですが, 今度は Bluetooth が未対応のようでした.

付属CD-ROMのreadmeによると「BlueWalker Bluetooth USB adapter with installed compliant IVT BlueSoleil software」が必要なようです.
設定画面を見ると,COMポートの指定なのですが,通常のBluetoothではCOMポートは無いので,通常のBluetoothデバイスではダメなのかもしれません.

使い勝手など

液晶の視野角

液晶の視野角がかなり狭いようです.
正面からは普通に見えるのですが,斜めから見ると数値が読めなくなってしまいます.

他の線量計の液晶ではそのようなことがないので,TERRAで使用されている液晶の特性なのだと思います.
通常は正面から見れば良いのでそんなに不便は無いと思いますが, どこかにおいてβ線を測るときなどは,角度によっては見づらいことがあります.

誤差・線量率のロジック

線量率リセット動作

TERRA は,線量率が大きく変化したことを検知すると,それまでの測定結果を破棄して, 新しく測定を開始します.

画面の誤差には nn%,線量率には 0.00 と表示されるので,すぐに判別することができます.

このリセットは,誤差が点滅中は起きにくく,誤差が点灯状態になると起きやすくなるようです.

誤差が点滅中はまだ線量率が決まっていないので,極めて大きな変化が無いとリセットしないようです.
一方,誤差が点灯になり,線量率を一度判断すると,そこからある程度ずれるとリセットの動作をします.

持ち歩いて測定する場合,点滅中の場合は線量率がかなりずれていてもそのまま測定が続くので,注意が必要ですね.
移動した場合は,手作業でリセットする(モード切替で1周させる)ようにするのが良いと思います.

手動での誤差設定時の動作

手動で誤差の設定を行うことができます.

TERRAは,一度設定した誤差まで到達すると,線量率が変化したときに統計をリセットしやすくなります.

また,誤差まで到達すると,その誤差を維持できる分だけの測定データを残し, それより古いデータは破棄していくようです.

時間を掛けてでもなるべく正確に測りたい場合は,誤差を10%や5%に設定すると良いようです.

誤差を手動設定した時,線量率と誤差がどのように変わるかを測定してみました.

測定は以下のように行いました.

測定はそれぞれ1回ずつですので,何回かやると少し異なる結果が出るかもしれません.

30%設定

30秒ほどで設定誤差になり,その後誤差は安定しています.
線源を近づけたときにはリセット動作が起きました.

一方,線源を離したときはリセットはされず,徐々に数字が下がっています.
統計リセットの判断は,線量率が上がったときの方が起きやすいようです.

20%設定

2分の少し前に20%の設定誤差くらいになりましたが, 予想に反して統計はリセットされませんでした.
リセットされなかったため,線量率はゆっくりと変化しています.

10%設定

2分の時にはまだ目標の10%に到達していないため,統計はリセットされず, 線量率はゆっくりと変化しました.

4分の時には,10%に到達していたためか,統計がリセットされました.

5%設定

2分の時にはまだ目標の5%に到達していないため,統計はリセットされず, 線量率はゆっくりと変化しました.

4分の時にもまだ5%に到達していないため,その後もゆっくり線量率が変化します.

その後5分過ぎくらいで,突然統計がリセットされました.
線量率の変化が激しいことを認識したのでしょうか?
何故このような動作になるのかはよくわかりませんでした.

まとめ

お借りしてしばらく使わせて頂きましたが,一定誤差タイプであるため, ある場所の線量率を測りやすいのが便利です.
時定数タイプだと,どうしても線量率の表示がふらついてしまうため, 線量率の平均値を自分で出すなどしないと,なかなか正確な線量率を把握しにくいです.

一定誤差タイプなので,誤差が一定になるように測定時間の方が変動します.
いろいろな場所で線量を測るのに使い勝手が良いと思います.

この黒Bluetoothモデルは,TERRAの中でも誤差表示がされますので,測定の状況も把握できるのが良いところです.
自分で目標を設定できますので,例えば大まかにあちこち測りたい,とか,時間かけてでもより正確に知りたい,とか, そのときの目的に応じて,測定器の動作を変更することができるのも大きな特徴です.

価格が少し高いですが,その点にメリットを感じる場合は,TERRA黒Bluetoothモデルは良い選択肢になると思います.

一方,β線測定もできるのもメリットですが,エネルギーの高いβ線しか感知しないため, β線測定を目的にする場合は,低いエネルギーのβ線も検出できる機種とも検討した方が良いかもしれません.
セシウム137やストロンチウム90は,0.5MeVを少し超えたくらいがβ線の最大エネルギーですので, スペック上の0.5MeV~の検出では,一部のβ線しか検出できないことになりますが, 実際に測定するとかなり反応します.
感度は落ちますが,セシウム137の検出にも十分役に立つと思います.

また,積算線量も測れるのですが,1μSv単位ですので,1日単位で把握するにはちょっと単位が粗くなってしまいます.
毎週や毎月の単位で大まかに知る目的としては,積算線量計としても利用できると思います.
(ただし,汚染箇所を探したりすると,それによってズレは出てしまいますが…)

写真だとなかなか分かりにくいですが,測定器の中ではかなり小さい方になると思います.
液晶は大きいですが,サイズはTERRAの他のシリーズとかわりがありません.

γ線で空間線量を測ることが主な目的で,誤差表示も見たい,という場合に良い選択肢だと思います.
他に誤差表示のPolimaster製品もありますが,TERRAと同じ150cpm/μSv/h程度の性能のものだとだいぶ価格が上がります.
その点,TERRAはコストパフォーマンスが良いと言えます.
(ただし,PolimasterのGM管製品はエネルギー補償有りですので,そこを考えて選ぶと良いと思います)

10万円以下の機種で,γ線の測定メインで行うのには使いやすい良い機種だと思います.

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