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線量率の変動比較・第5回 (2011/11/13)

放射線測定器・ガイガーカウンターは,その感度や内部の計算ロジックの都合上, 線量率がふらついて表示されることがあります.

そこで,6機種で安定度を調べました.

Coliy Radiation Scanner 900+ と TERRA黒 についてはおたかさんから, RD1008については 晴れなん堂 さんから,それぞれ測定器をお借りしました.
ありがとうございます.

測定方法

品川区五反田のマンション中層階の窓際で,カーペットの上に測定器を並べて, それぞれの線量率を確認しました.

今回は動画撮影をして,後で動画を見ながら数値を読み取ったため, Polimaster機種は少し立てた状態で測定しました.

測定時間は1.5時間です.

測定機種と測定結果

測定機種と,その特性をまとめると以下のようになります.
測定結果は,1.5時間での結果なので,かなり誤差が少ない結果となっています.

機種名 測定タイプ 感度
(cpm/μSv/h)
時定数・サンプリング時間 測定結果
Polimaster PM1703MA 積算 6000 0.055 ± 0.001μSv/h(±1.9%)
堀場 PA-1000 Radi 移動平均 2000 60秒 0.050 ± 0.001μSv/h (±1.8%)
TERRA黒 一定誤差 132 0.072 ± 0.002μSv/h (±2.8%)
RADEX RD1008 移動平均 100~300? 2分48秒 0.081 ± 0.004μSv/h (±5.5%)
Coliy Radiation Scanner 900+ 移動平均 80.4 60秒(8~120秒変更可能) 0.059 ± 0.005μSv/h (±7.9%)
テクノAP TA100U 時定数 800 60秒 0.058 ± 0.004μSv/h (±7.0%)

移動平均タイプというのは,一定時間ごとの数値を表示するタイプです.
一定時間は利用者が選択できたり,線量率に応じて自動選択される場合があります.

時定数タイプというのは,アナログ的な計算で直近の測定結果を重視するタイプです.
時定数の時間が経過すると約63%変化し,2倍経過で86%,3倍経過で95%まで変化します.

積算タイプというのは,線量率が変化したと検知しない限り,より長時間の測定結果を元に正確な数値を表示しようとするタイプです.
こちらは移動しないときは正確な数値が読み取れる反面,移動しながら使う場合は,表示されている線量率がどの範囲の測定結果なのかわかりにくいという欠点があります.

全機種測定結果グラフ


※機種毎にグラフの表示をON/OFFできます
PM1703MA PA-1000 Radi TERRA黒 RD1008 Coliy Radiation Scanner 900+ TA100U

機種毎の測定結果の詳細

各機種の測定結果とグラフです.
グラフ下のリンクをクリックすれば元データを確認できます.

Polimaster PM1703MA


元データ

高感度で積算タイプのため非常に安定しています.

堀場 PA-1000 Radi


元データ

ばらつきはありますが,ほぼ±0.01μSv/hの範囲です.
他機種と違い,この機種は小数点以下3桁まで表示しますので, グラフ上では点がばらついていますが,0.01μSv/h単位に四捨五入した数値で考えれば, かなり安定していると言えると思います.

TERRA黒


元データ

TERRAシリーズは積算タイプのアルゴリズムのようで,数値は安定していますが,多少のふらつきがあるようです.
±0.01μSv/hの範囲でのふらつきがほとんどなので,数値は読み取りやすい方だと思います.
画面に表示される数値は比較的落ち着いていますが,正確に知りたい場合は何回かの測定値の平均を取った方が良さそうです.

RADEX RD1008


元データ

サンプリング時間が2分48秒と長めですが,そのおかげもあって移動平均タイプの中では安定している方だと思います.
ほぼ±0.01μSv/hの範囲で,時々±0.02μSv/hの範囲まで出る感じです.

Coliy Radiation Scanner 900+


元データ

サンプリング時間が8~120秒で可変の機種です.今回は60秒に設定しました.
感度が80.4cpm/μSv/hと他機種に比べると低めであるため,数値のふらつきが大きくなっています.

低線量で使う場合は,サンプリング時間を120秒にするか,タイマー機能を使って5~15分くらいかけて積算線量を測定し,計算で線量率を求める方がよさそうです.

テクノAP TA100U


元データ

(前回と同じコメントですが…)
かなりばらつきがあります.
800cpm/μSv/h の感度にしてはばらつきが大きいので, CdTe素子の扱いにくさの問題などがあるのかもしれません.
線量率の測定をする場合は,多めに平均を取らないと安定した結果が得られないようです.
分解能の高いスペクトル用の測定器と考えた方が良いのかもしれません.

まとめ

1.5時間程度かけて測定しましたが,1回だけの測定ですので,結果はたまたまという可能性もあります.
それでも,結構機種毎の違いなどが見えたのではないかと思います.

以前の測定結果も合わせて参考にして頂ければと思います.


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