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放射線測定器 Polimaster PM1710A レビュー

放射線測定器 Polimaster PM1710A を たろうまる さんから無償でお借りすることができたので,使用感などをまとめてみました.

たろうまる株式会社について

以前より たろうまる さんからいろいろな機種をレビューのためにお借りしてきましたが, 今回は PM1710A もレビューさせて頂けることになりました.

まだ専用ページはないようですので,購入を検討される方は, たろうまるさんにお問い合わせ 下さい.

Polimaster PM1710A について

PM1710A はCsIシンチレーション検出器を使用した放射線測定器(ガイガーカウンター)です.

特徴としては,

超高感度
Cs137でカタログスペック30000cpm/μSv/h(500cps/μSv/h)の感度があります.
しかし,実際はそれ以上のスペックがあります.
どうやら,発売当初から改善されており,発売当初は35000cpm/μSv/hくらいだったようですが, 今出荷されているものは66000cpm/μSv/h以上くらいはあるようです.
今回お借りした機種は,校正証明書によると1195cps/μSv/h=71700cpm/μSv/hの感度でした.
30万円の価格でこの感度はコストパフォーマンスが非常に良いと思います.
ただし,エネルギー補償は簡易補償となっており,少し誤差が大きいようです.
探索モード&自動アラーム
高感度を生かして,非常に反応が早い探索モードがあります.
汚染箇所に近づくとすぐにアラームが鳴ります.
バックグラウンドの線量との差を自動的に計算し,多段階でアラームが鳴ります.
バックグラウンドの線量は簡単に再学習させることができるので, その場所にあったアラーム設定を簡単に行うことができます.
放射性物質による汚染がありそうな場所にいくときなどは非常に使い勝手が良いと思います.
普通のホットスポットなどのような,ある程度の汚染であれば,PM1703MAでも素早く反応しますが, 微量の汚染も発見したい,という場合は,PM1710Aの超高感度が活躍すると思います.
一体型&丈夫
単3電池1本で1000時間動作します.
PM1710A は IP65 ですので, 防水規格 IP表記に詳しく記載がありますが,
耐塵形(粉塵が内部に侵入しない)&噴流水に対する保護(いかなる方向からの水の直接噴流によっても有害な影響をうけない)
というレベルになります.
このクラスの感度を持つ測定器だと,検出機部分と表示部分が別々になっており,ケーブルで繋げるタイプが多いと思いますが, こちらは一体型です.
線量率を読み取るのが本体でしか出来ないのは欠点かもしれませんが, 鞄に入れての持ち運びなどがしやすく,個人が日常的に使うのには向いていると思います.
PC連携可能
PCから,線量率の推移を確認することが可能です.(最短10分間隔で1000ポイントまで)
誤差表示
ディスプレイに常に誤差が表示されます.
「今のこの数値は安定した数値か?」ということがわかるように誤差表示が付いています. マニュアルによると15%以下になってから数値を読むのが良いようです.
測定器にはどのくらいの時間で平均計算するかについて,固定のもの(Mr.GammaやPA-1000 Radiなど)と, 固定ではなくて状況に応じて可変のもの(その他大半?)があります. 可変の場合,どのくらい待てば正確な数値になるのかわかりにくいのが欠点ですが, この機種では誤差が出るので,その目安がわかります.

内容物

届いたものは次の写真のようなものです.

放射線測定器の他に,たろうまるさんで翻訳された日本語マニュアルが付属します.
箱を開けると,PM1710A本体,校正証明書(右下),英語マニュアル(左下),PCソフトウェアのCD-ROM,電池が入ってました.

校正証明書は次のような感じで,感度が記載されています.
お借りしたものは Cs-137 で 1195cps/μSv/h(=71700cpm/μSv/h)の感度があります.
最初に記載したように,カタログスペック500cpsに比べて大幅な性能向上があるようです.

本体の表裏はこんな感じです.
細長い羊羹のような形で,裏にクリップがあります.

クリップはこんな感じです.

本体側面はこんな感じで,検出器がある方(左下の写真)は平らで何もありません.
検出器自体のサイズはマニュアルに記載がありませんが, 液晶の左側部分の灰色のあたりに大きな結晶が入っているのではないかと思います.

右下が反対側の写真です.
電池の蓋(左下),ランプ(電池蓋の上の▽のところ),外部バイブレーションを繋げるコネクタ(上側真ん中あたりにある○)があります.
右下の穴のようなものは,アラーム用のブザーです.

電池の蓋を開けると,ここに単3電池が1本はいります.
単3電池1本で1000時間もつので,電池の持ちは結構良い方だと思います.

外部バイブレーション

本体にはバイブレーション用のオプションが付いてくるらしいのですが,なかったような…と思ったら, 箱の中に入っていました(^^;

箱の裏側にこんな感じでホチキスで留められていました.

中に,腕に付けるバンドと,外部バイブレーション,電池が入っていました.
(電池は2本入っていましたが,最初の1本はレビュー用にたろうまるさんが気を利かせて付けて頂いたもののようです)

外部バイブレーションは,こんな感じで本体にさして,腕にバンドを着けて使うようです.
外部バイブのクリップが,腕のバンドにぴったりひっかかるような作りになっています.

外部バイブ自体にクリップが付いていますから,このバンドを使わず,鞄等に付けて使うことも可能です.

本体自体にはバイブ機能はなく,この外部オプションを付けた場合のみ動作します.
本体のみの場合は,音のアラーム機能しか使うことが出来ません.

外部バイブレーションについては,メーカーサイトに腕に装着したときの写真があります.

External Vibration Alarm (Polimasterサイト)

大きさ

大きさは以下のような感じです.
長さはDSiより長いくらいで結構ありますが,灰色の部分に大きな放射線検出用の結晶が入っているのだと思います.

他の測定器と比べるとこのような感じす.

画面表示

画面表示は以下のようになります.

左がサーチモード,右が線量率測定モードです.
モードボタン(左のボタン)で切り替えられます.

サーチモードでは,上にカウント数,下に誤差が表示されます.
線量率測定モードでは,上に線量率,下に誤差が表示されます.

モードを切り替えても,測定結果がリセットされることはありませんので, カウント数と線量率を見比べることができます.

電源ON後の様子

電源ON後の様子を撮影しました.

CAL表示の時は,バックグラウンドの線量を測定しています.
その測定結果を元に,自動的にアラームを鳴らす線量が設定されます.
アラーム線量が自動設定されるのは大変便利なのですが,電源ONには少し時間がかかるので, 普段は電源を切らずに利用した方が便利だと思います.

アラーム音

PM1710A のアラーム音は,結構大音量です.

PM1703MA などと比べても大きい印象で,普段の町中などでこのアラームを鳴らすと目立つと思います.

かなり大きな音量なので,騒音の大きな屋外などで使用するような場合は,音が聞き取りやすいと思います.

線量率の測定

線量率は,Polimaster系の誤差表示タイプのロジックなので, 線量率が大きく変化しなければ,長い時間を掛けてより正確な数値を表示しようとします.
従って,徐々に誤差表示が小さくなり,より安定した数値が表示されます.

この機種は感度が高いためか,リセット機能がありません.
極めて高感度なので,ちょっとした線量率の変化でもすぐに追従しますので, 実際に必要なさそうな印象です.

別機種ですが,PM1405での誤差表示について調べたことがあり, この機種では場合によっては線量率が落ち着くまでに6分以上かかるケースが確認できます.

参考:Polimasterシリーズの誤差表示 (2011/08/07)

しかし,この機種は感度が大きく違います.
感度がPM1405では150cpm/μSv/h,この機種では60000cpm/μSv/hで400倍違いますから, こちらなら数秒もすれば正しい数値に落ち着くと考えられます.

実際リセットはほとんど不要かと思いますが,気になる場合は電源OFF→ONでリセットできます.
ただ,電源ON後にバックグラウンド線量の測定(CAL表示)がありますので,適当に1分くらい待って数値を読み取る方が良いのではないかと思います.

反応速度

放射線源を近づけて反応速度を撮影しました.

汚染を探すときはcps表示にして使用します.
動画を見てもらうと分かりますが,本当に気持ちいいくらい素早く反応します.

高い線量では当然すぐ反応するので,線源をあまり近づけず,比較的小さな変化にして撮影しています.

次に,Sv/h表示での反応速度の様子です.
1:00くらいで近づけているのでそのあたりからご覧下さい.

Sv/h表示では,数値を正確に出すためか,変化が若干緩やかになっています.
それでも,かなり素早く数値が収束していく印象です.

線量率モードでは,アラーム(音・バイブ)は作動しません.
持ち歩いて,汚染箇所に近づいたときにに知りたいという場合,普段はcpsモードにしておく必要があります.

こちらも線源をあまり近づけないでの撮影です.

100cps/μSv/hの感度のPM1703MAと同時に撮影してみました.

測定器と線源の距離が正確に一致しているわけではないので,参考程度に見て頂ければと思いますが, PM1710A の反応の早さがわかると思います.

PM1703MAとの感度差

お借りしている間,鞄の中にPM1703MAとPM1710Aの両方を入れて,しばらく持ち歩いていました.
PM1710Aは外部バイブレーションを鞄のふちに付けて,どちらも振動でわかるようにしました.

家の中から,外に出ると,だいたい 0.06μSv/h → 0.11μSv/h くらいの変化があるのですが, こういったとき,PM1703MA はあまり反応しません.
しばらく歩いているとたまにプルッと震えることがありますが,このくらいではアラームが鳴りません.

一方,PM1710A は,このくらいの変化があれば,外に出てかなりすぐにプルッ…プルッ…と弱いバイブが継続的になります.
感度が高いため,放射線量のふらつきが少なく,小さな変化でも確実にアラームを鳴らせているようです.

PM1710A でも,0.02μSv/h とか僅かな場合は,アラームまでは鳴りません.
しかし,0.05μSv/h 程度の差があればアラームが鳴るような印象です.

持ち歩いて高い汚染を避けるのには,PM1703MAでも十分ですが, こういった少しの線量変化もいち早くアラームで知らせて欲しい, という場合には,PM1710A の感度が必要なようです.

自己ノイズ

PM1710A を鉛ブロックの中に入れると,画面表示で 0.00μSv/h,1cps を確認できました.

10分毎にログに記録した方では 0.01μSv/h,1cps だったので,画面表示と少し違う結果となりました.
ログと画面表示では端数の処理が違うようです.

簡易エネルギー補償

PM1710A は簡易エネルギー補償がされているようです.
誤差が大きいので,エネルギー補償有りとはなっていませんが, 大きくずれた値は出ないように,エネルギーの高さに応じた調整がされているようです.

PM1710A で,cps表示と線量率表示を切り替えて,いろいろな線源でその関係を調べたところ,次のようになりました.
cps/μSv/h が一定で無いことから,ある程度のエネルギー補償はされているようです.
おそらく,エネルギー補償が十分な精度ではないため,スペック上はエネルギー補償無しとしているのだと思います.

以下の測定は,それぞれの密封線源を測定器に近づけて,cps表示,Sv/h表示を切り替えてそれぞれの数値を確認し, バックグラウンド時の数値(34cpsで0.07μSv/h)を引き算してから計算しました.
表の数値はバックグラウンド分を引き算した後の数値です.

線源 主要エネルギー cps μSv/h cps/μSv/h
Cd-109 88.0keV 141 0.06 2350.00
Ba-133 122.1keV 4222 3.78 1116.93
Cs-137 661.6keV 1189 1.61 738.51
Mn-54 834.8keV 4700 8.03 585.31
Co-60 1173.2keV・1332.5keV 4426 10.89 406.43
Na-22 1274.5keV 1466 2.59 566.02

PM1710Aの校正証明書には,Cs-137で感度1195cps/μSv/hと記載があるので,この測定値738.51cps/μSv/hとはだいぶ乖離があります.

校正時はγ線を一様に同じ方向にあてていると思いますが,今回のテストでは測定器のすぐ側に点線源を置いたので, 測定器には斜めに入るγ線が多くなります.
これが原因かな?と思いつつ,たろうまるさんに,Polimaster社に確認してもらいました.
メーカーからの回答では,やはり一様に同じ強さの放射線を当てないと,正しく測定できないとのことです.

実際に屋外などで汚染箇所を探すときは,校正時のような条件とは異なり,どちらかというと今回のテストのような状況に近いと思います.
ですので,実運用上は実質700cps/μSv/hくらいだと考えた方が良さそうです.
(他機種も校正時は一様な放射線でやっていると思いますので,他機種と比較するなら,約1200cps/μSv/hの数値で比較する必要があります)

今まで,検出機が小さい機種では同じ方法でのテストでもあまり差がでなかったのですが, 高感度の機種だと検出機部分が大きくなるので,一様に当てることが重要になってくるようです.

いずれにしろ,極めて高感度であることには変わりませんので, 超高感度機種として大変優れた性能だと思います.

PCソフトウェア

PM1710A には,PM PRD というソフトウェアが付属します.

こちらを利用することで,イベントの記録を参照したり,PM1710A の設定を変更することができます.

IRDA通信

IRDAで通信を行います.

タスクトレイに PM PRD が常駐しており, PM1710A を近づけて,ランプボタンを押すと自動的に履歴の転送が始まります.

取り込み後に次のような画面が表示され,これを閉じるとPC側のDBに追記され,全体を一括でみれるようになります.

イベントの閲覧

以下の図のように,イベントとして動作状況を見ることができます.

cpsで記録されるか,μSv/h で記録されるかは,そのときの本体の表示に依ります.
ですので,線量率を残しておきたい場合,本体の表示は Sv/h にしておく必要があります.

線量率を記録するというよりは,発生したアラームを後から確認する目的で用意されているようです.

イベントは1000ポイントまで記録できます.
10分毎に記録すると約1週間になります.

記録は最小で10分間隔で,それ以下の数値を設定しようとしても10分に変更されてしまいます.

設定変更

次のような画面で設定変更ができます.
本体のみでは設定できない項目もあるので,それらはPCから設定します.

64bit未対応

PM PRD は 64bitに対応できていないようです.
64bit 環境ではエラーが出て起動しません.

一部の設定変更を除き,基本的にはPCソフトウェアを利用する必要性はあまり無いので, PCソフトが利用できなくてもあまり大きな問題は無いと思いますが, PCソフトを使いたい場合は,購入時に注意が必要です.

測定値の比較

測定値はPM1703MAと同等の印象です.
家の中での測定値などはPM1703MAと変わらず,数値の変動も同じようにほとんどありません.
感度以外,内部のロジックなどは同じなのではないかと思います.

PM1710A の線量率の表示はきわめて安定している上,反応速度もとても速いので, 特定の場所の線量率を知るほか,移動しながら線量率の変化を見るのにも適していると思います.

PM1703MA との違いとしては,低い線量率の変動にも素早く反応するところだと思います.
PM1703MA の場合,例えば1μSv/hのようなある程度高い線量ならすぐに反応しますが, 0.07μSv/h → 0.10μSv/h のような反応は素早くなく,時間がかかってから数値が変わります.
PM1710A はそのような変動においても,良く反応する印象です.

まとめ

この機種の特徴は,超高感度であることです.
感度以外の機能や操作については,PM1703MA と同じと考えて良いと思います.

1μSv/hなどのある程度の放射線量を素早く検知したい場合,より安いPM1703MAでも十分だと思いますが, PM1703MA では,低い線量率での少しの変化は,なかなか反映されません.
例えば,0.07μSv/h → 0.10μSv/h のような変化の場合,PM1703MA では比較的ゆっくり変化します.

少しでも高い場所を素早く見つけたい,というような目的がある場合は,この機種の超高感度が役に立ちます.
感度が高いため,そういった微量の放射線量の変化も,素早く反応します.

また,高感度の機種の場合,多くは検出機部分と本体がケーブル等で繋がれているセパレートタイプなので, なかなか持ち運びが大変です.
サイズ的にも鞄の中に入るものはなかなかないと思います.

PM1710A なら,鞄にも入るコンパクト設計なので,普段から持ち歩くのにも適しています.

PM1703MA と比べると2倍の価格ですが,感度は5~10倍あります.
軽微な線量率の変化も気になる,そういった変化も素早く知りたい,といった要求があれば, PM1710A は良い選択肢だと思います.

代替機貸し出しサービス

たろうまるさんでは,測定器故障中に代替機の貸し出しサービスを行っているそうです.
PM1610またはPM1621がレンタルされるとのことです.
PM1710Aの代わりにはなりませんが,測定器1台しか持っていない場合には安心できるサービスだと思います.

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