腕時計型ガイガーカウンター Polimaster PM1208M レビュー を
たろうまる
さんから無償でお借りすることができたので,使用感などをまとめてみました.
この機種は,南相馬市で妊婦の方に貸し出された機種と同じです.
(下記レビューを見て頂くとわかりますが,妊婦の方に向いている機種ではないと思います.でも,何も無いよりはいいのかもしれません(^^;)
参考:南相馬市で妊婦の方に貸し出し
PM1208M も販売すると言うことで,レビューのために貸して頂きました.
Polimaster製品を専門に取り扱っている会社で,以前より取扱機種をお貸しして頂いております.
参考:放射線測定器のたろうまるさんホームページ
PM1208M はガイガーミュラー管を使用した腕時計型の放射線測定器(ガイガーカウンター)です.
特徴としては,
届いたものは次の写真のようなものです.
腕時計と,CD-ROM・マニュアルになります.
本体の他に,日本語マニュアルが付属すると思いますが,
今回はまだ準備できていないようです.
(発売時には翻訳マニュアルが付属するはずです(^^;)
大きさはこんな感じです.
腕時計なので,普通の測定器よりは小さいですが,男性向けの大きめの腕時計と同じ感じです.
女性が付けるにはかなり大きい印象です.
わたしは普段腕時計をしないので大きい&重いと感じましたが,男性向けの腕時計をしている方の時計と比べさせてもらったところ,
重さも大きさもあまり変わりませんでした.
厚さは若干厚いような印象がありますが,普段男性向けの腕時計をされていれば違和感なく使えると思います.
現在,たろうまるさんでは Hersch 防水カラーベルト を購入者の方にプレゼントしているそうです.
わたしがお借りしたのはステンレスベルトですが,どうもこのベルトが重いそうです.
革ベルトだと軽いそうですが,付属の黒いベルトはあまりかっこよくない(^^;ということで,
こちらの防水タイプのベルトのプレゼントをされているようです.
画面は次のような感じです.
時計右下のMODEボタンで,3つのモードを切り替えます.
各モードの最初の画面は以下のようになっており,左から線量率モード,積算線量モード,時計モードです.
時計左下のSELECTボタンで,それぞれのモードの中で更に画面を切り替えます.
基本的には,画面上のバーは線量率を表しており,アラーム設定値になると右側まで塗りつぶされます.
左側の円グラフは積算線量を表しており,こちらもアラーム設定値になると全部塗りつぶされます.
最大値がアラーム設定値なので,アラームが鳴らないように非常に大きな値を設定していると,
グラフ表示がほとんどされないことになります.
見た目のためには,アラームの設定を行った方が良いと思います.
ただし,簡単にアラームをOFFにすることはできないので,映画館等,静かにしなければならない場所に行く場合は,
予め設定を変更しておく必要があるかと思います.
音量はあまり大きくありませんので,電車の中など日常的な範囲であれば鳴ってしまっても大きな問題は無いと思います.
放射線検査・治療をされた方などが近くにいると日常生活中でもアラームが鳴る場合がありますので,
その点は注意が必要です.
参考:放射線治療・検査をした人の発する放射線 (2011/08/07)
線量率モードを一番よく利用することになると思います.
左から,線量率表示,線量率のアラーム値表示,メモリ機能,統計リセット機能の画面になっています.
メモリ機能の画面にしてから,MODEボタンを押すことで,その場の線量率を記録できます.
(後でPCから閲覧できます)
また,統計リセット機能の画面にしてから,MODEボタンを押すと,今までの統計をリセットして,
新しく測定を開始します.
このときは,左上の円グラフが誤差表示になります.
誤差100%なら真っ白で,誤差20%で真っ黒になります.
ですので,この機能を使うことで,どのくらい待ってから線量率を読み取るべきなのか判断できます.
ガイガーカウンターにありがちな,数値がふらついて数値が読み取りにくいということはありません.
低線量では時間がかかりますが,こちらの機能でその場の線量率を簡単に測定できます.
また,測定後にMODEボタンを押すと,その数値をメモリに記録することもできます.
左から,積算線量表示,積算線量のアラーム値表示,積算線量の積算時間表示の画面になっています.
積算線量は 0.001mSv=1μSv 単位になります.
東京など低線量の場所では,1日単位で見るにはちょっと粗いですが,
1週間ごとや,1ヶ月毎に確認するには十分だと思います.
積算線量時間として,何時間での積算かも表示されますので,割り算することで平均的な線量率も計算可能です.
写真では,0.007mSv=7μSv を 40時間 で測定したことになりますので,7÷40=0.175/μSv/h ということになります.
(高い数値なのは線源を近づけてテストしていたりするためです(^^;)
時計モードでは,デジタル時計の設定を行います.
線量率をメモリに記録したりする場合は,デジタル時計の時刻で記録されますので,
こちらは正確にあわせておきたいところです.
アナログ時計とは独立しており,アナログ時計は右側のつまみで別途設定します.
SELECTボタンで5画面あり,最初が時刻表示,次がアラーム時刻表示です.
1つアラーム時刻を設定することができます.
(時刻によるアラーム機能は容易にON/OFF可能です)
3画面目は日付(日月の順序です),4画面目は年,5画面目は分:秒,が表示されます.
アナログ時計の方は,デジタル時計とは完全に独立していて,右側のツマミを使って別途調整します.
時計モードのデジタル時計はログの記録などにも利用され,PCから設定可能ですが,
アナログ時計の方は手作業での設定が必要です.
放射線の検出音を出すことができます.
どのモードでも,MODEボタンを長押しすると,ベルマークが表示され,放射線を検出するたびにピッという音が出るようになります.
高い放射線がある場所を探す場合は,こちらで探すことができると思いますが,
ちょっとした汚染では音の間隔が長くて厳しいと思います.
反応速度の動画を,検出音ありで撮ってありますので(後述),そちらを参考にして下さい.
10μSv/hくらいあるような場所であれば,この機能での探索も実用的になるのではないかと思います.
腕時計型で感度が低いため,低線量の場合は線量率が変わってもなかなか表示に反映されません.
線量率が上がったときは素早く,下がったときはゆっくり反応しますが,
0.1μSv/h程度ではかなり時間がかかります.
場所を移動したりした後に線量率を測りたい場合は,
線量率モードの4画面目にして,MODEボタンを押して統計をリセットして測ります.
この場合,左側の円グラフが徐々に塗りつぶされていき,全て塗りつぶされたときが誤差20%になります.
塗りつぶされるまで待って,数値を読み取るのが良いと思います.
円グラフが塗りつぶされるまで(誤差20%まで)の時間を線量率を変えて測定してみたところ,
次のようになりました.
線量率 | 誤差20%になるまでの時間 |
---|---|
0.04 μSv/h | 約18分20秒 |
0.36 μSv/h | 約5分40秒 |
0.50 μSv/h | 約4分20秒 |
1.12 μSv/h | 約2分5秒 |
2.31 μSv/h | 約1分5秒 |
15.88 μSv/h | 約10秒 |
検出音と表示された線量率から,およそ 8cpm/μSv/h の感度があるようです.
腕時計サイズに納めるためにだいぶ感度が下がってしまっているようです.
線量が高ければこのくらいの感度でも数秒で反応しますし,積算線量を見る分にはあまり感度は影響しませんので,
利用目的によっては問題ないと思います.
低線量の地域で,線量率を測りたい,というような目的には向かないので,
その点は注意が必要だと思います.
放射線源をそばに置いて反応速度を調べてみました.
Cs-137線源を近づけてみました.
1μSv/hでアラームを設定しています.
このくらいの増加ではアラームが鳴るまでに少し時間がかかります.
複数の密封線源を近づけてみました.
アラームは鳴らないように高い値を設定しています.
このくらいの線量率では,数秒で数値が変わります.
感度が低いとはいっても,このくらいの高い線量を検出するには十分な性能があります.
線源を離しても,線量率はすぐには下がらないようです.
上がるときは速く,下がるときはゆっくり変化するようです.
この製品には標準でPCソフトウェアが付いてきます.
PCソフトウェアでできることは,PM1208Mの設定変更と,定期的もしくはボタン操作で記録した線量率・積算線量の取得・グラフ表示です.
付属ソフトで設定の変更ができます.
設定は3つのタブに分かれています.
本体シリアル番号の確認と,時刻の設定,時計アラームの設定ができます.
シリアル番号の確認以外は,腕時計の方の操作でも設定できます.
線量率・積算線量のアラーム値の設定や,積算線量のリセットができます.
アラームの閾値は腕時計側でも設定可能です.
また,積算線量のリセットは,腕時計で積算線量の設定値を変更することで可能です.
結構操作が面倒なので,PCが側にあるときはPCからやった方が楽だと思います.
履歴を定期的に残す設定ができます.
履歴は500ポイントまで記憶することができます.
Linearでは,メモリがいっぱいになればそこで動作を停止しますが,
Cyclicでは,メモリがいっぱいになると古いものを消して記録を続けます.
(最新の500件が残ることになります)
Linearでは1秒間隔から設定できますが,Cyclicでは1分間隔以上になります.
ただ,測定器の感度を考えると,高い線量率の所に行く場合を除いて,1分などの短い間隔で記録することはあまり意味が無いと思います.
また,履歴は残す間隔だけでなく,記録を開始するまでの時間も設定できます.
1分間隔だと8時間強,5分間隔だと41時間強,15分間隔で5日強くらいが記録できます.
週に1回履歴をPCにコピーするとして,30分間隔くらいがちょうど良いのかもしれません.
PC側に取り込んだ履歴を表示できます.
線量率と積算線量が,同時に記録されます.
測定値をグラフ表示できます.
色々表示モードがあるのですが,見た目が少し違うだけで,線量率と積算線量のグラフになります.
一番見やすいと思われる表示の画面だけ紹介します.
まずは積算線量のグラフです.
0.001mSv=1μSv 単位なので,少し時間をあけて段々と上がっていく感じになっています.
次は線量率のグラフです.
6μSv/hまで上がっているのは線源を近づけてテストしたりしたためです.
グラフにはマーカーを表示でき,マーカーの場所の時刻・数値を確認することができます.
また,2つのマーカーを選ぶと,誤差や平均値などを計算させて表示することもできます.
測定値の実際の値の比較は別ページにまとめていますので,そちらを参照してください.
参考:放射線測定器・ガイガーカウンターの測定値比較
また,線量率の変動のテストも行いました.以下も参照して下さい.
参考:線量率の変動比較・第6回 (2011/11/27)
ガイガーミュラー管を使用した測定器ですので,自己ノイズも測定してみたところ,0.03μSv/h程度でした.
かなり感度が低い機種ですが,他のGM管の測定器に比べても,ノイズはそんなに高くはないようです.
腕時計型に魅力を感じるかどうか,でこの製品の価値が大きく変わりますね.
ガイガーカウンター付き腕時計という所に魅力を感じるのであれば,良い選択肢というか,
選択肢がこの機種くらいしかありません.
(Polimasterからもう1機種でていますが,そちらはデザイン的にかなり微妙かな?(^^;)
普段腕時計をしていて,デザイン的にOKということであれば,
積算線量計としても使えますし,話のネタにできるいい腕時計だと思います.
腕時計型にするために感度を低くしなければならなかったところが,
放射線測定器としては残念なところですが,サイズの制約ですからどうしようもありません.
感度以外については,Polimaster製品のノウハウが詰まった使いやすい機種だと思います.
統計リセットしてから積算方式で安定した線量率が読み取れたり,累積線量をPC連携で管理できたりと,
機能的には優れていると思います.
特に腕時計型じゃ無くても良い,という場合は,小型でもう少し感度の高いPM1610や,
もう少し感度の高いPM1621などを検討されるのが良いかと思います.
PM1208Mですが,6万円台で販売しているショップもありますが,
たろうまるさんによるとメーカーの提供原価から考えて今ではあり得ない価格だそうです.
おそらく,昔中国がメーカーから大量購入した商品ではないかとのこと.
この場合,メーカー保証切れになってないか注意が必要とのことです.
Polimaster製品は,メーカーから商品を受け取り後,数ヶ月以内に売り切らないと,
メーカー保証の期間が減っていく仕組みとのことです.
ですので,古い商品はメーカー保証の期間がその分短くなるようです.
購入を検討される方は,その点ご注意ください.
たろうまるさんでは,測定器故障中に代替機の貸し出しサービスを行っているそうです.
PM1610またはPM1621がレンタルされるとのことです.
積算線量の記録が途切れる期間を短くできますから,積算線量計としてPM1208Mを利用する方にとって良いサービスだと思います.