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ガイガーカウンター RADEX RD1008 レビュー

PDS-100GN/ID購入の話でメールをやりとりしていたshinさんから, RADEX RD1008 をお借りすることができました.ありがとうございます.
RD1008 の使用感などをまとめてみました.

また,その購入先のショップの晴れなん堂さんから連絡があり, 更に試せるようにとRD1008をお借りすることができました.
ありがとうございます.

RADEX RD1008 について

RD1008 はガイガーミュラー管を使用した放射線測定器(ガイガーカウンター)です.

特徴としては,

β線同時測定可能
表面汚染を調べるために,β線の測定が可能ですが,他の機種のように2度に分けて測る必要がありません.
γ線専用と,β線+γ線用の2つのGM管を搭載することで, 常時β線のみ(β+γからγを引き算して求める)の線量が同時表示されます.
個人で買える程度の価格帯では,知っている限りでは同時計測はこの機種のみです.
良いコストパフォーマンス
β線測定が行える機種としては,2つのGM管を搭載している機種としても安価です.
RADEXシリーズはもともと安いですが,RD1008もwonderland.shop-pro.jpで7.5万円です.

shinさんの購入の経緯

もともとPDS-100GN/IDに関する情報交換でメールをやりとりするようになったので, γ線についてはPDSで測定するつもりだったそうです.

β線についても有無を判定したいということで,パンケーキ型GM管で,簡単に測定できる機器を選定した結果こちらの機種を購入されたそうです.
Yahooオークションで69,000円で落札したそうです.

内容物

お借りしたものは次の写真のようなものです.

右側の写真はは電池ぶたを開けたところです.
単3電池1本で950時間持つので,電池の持ちはかなり良いようです.

Yahooオークションで出品していたショップが作成した日本語マニュアルも付属していました.
「晴れなん堂」というショップのようです.
(現在は楽天に出店されたようです.晴れなん堂 楽天市場店

最初,レビューで「校正証明書は付いていないようです.」と記載しておりましたが, こちらは誤りでした.大変申し訳ありません.お詫びして訂正いたします.

ショップの方から直接メールを頂き,実際に確認することができました.
箱の中に入っている,薄い冊子のものが証明書とのことです.
日本語マニュアルより一回りサイズが小さい冊子で,途中にシリアルナンバーと日付・サインが入っています.
以下の左側が冊子の写真で,右側がシリアルナンバー入りのページです.(シリアルナンバーはぼかしを入れています)

シリアルナンバーのページの下にサインがないのは,販売証明のサインなので,ロシア国内の販売でのみ利用しているそうです.

また,当初「ショップによるサポートが半年ほど」と記載しておりましたが,正しくは次の通りです.

とのことで,かなり手厚いサポートが期待できそうです.

β線を感知できるGM管は破損しやすいものですから,こういったサポートは良いですね.
ヤフオクでの販売ですが,今はamazon.co.jpでも販売されているとのことで, まもなく大手ショッピングサイトでも販売を開始する予定とのこと.

本体の大きさはこのような感じで,DSiをちょっと縦長にしたくらいの大きさです.
Radiより若干大きい感じはしますが,パンケーキ型GM管を2つ搭載しているので仕方ないところだと思います.

裏側はこのような感じです.

左側の写真はβ検出用のGM管の保護シャッターを閉じている状態です.
その右に十字と○がありますが,この位置にγ線専用のGM管が入っています.
(γ線のみなので,プラスチックの内側に入っていても問題ありません)

右側がシャッターを開いた状態です.
β線を測るときはこの状態にする必要がありますが,GM管は非常に壊れやすいので, 物が当たったりしないように細心の注意が必要です.

γ線のみ測れれば良い場合は,シャッターを閉じたままでも使えますので, β線を測りたいときだけ開ける使い方になるようです.

このシャッターは結構固いです.
下手に力を入れすぎると,手が滑ったときにGM管にブスリ,となる可能性もあるので, ちょっと気を遣います.
何度も利用していれば適度な堅さになるのかもしれません.(^^;

晴れなん堂さんからお借りしました

晴れなん堂さんから,ご購入者の方にご不便をおかけするのは良くないので, 晴れなん堂さんがお貸しします,とのご連絡を頂き,お借りすることができました.
ありがとうございます.

トリウム入りマントルも合わせてテスト用にと送っていただきました.
(トリウム入りマントルは後日測定してみます)

お借りした製品にはジップ袋とシリカゲル(乾燥剤)が付属していました.
晴れなん堂さんに確認したところ,オマケで付けているとのこと.
ただし,おまけなので数などは時々によって違うそうです(^^;

shinさんにも確認したところ,確かに購入時に付いていたそうです.

β線を測るために土の上などに置く場合は袋に入れる必要がありますし, 湿度に弱いGM管のためには保管時にシリカゲルが便利です.
この辺がオマケで付いたりするのは良いですね.

送られてきたときは,測定器はラップでくるまれて防湿のためにシリカゲルが入っていました.

本体の色

RD1008の本体は今まで青でしたが,今回のは白色です.

RD1008には白と青の二種類があるようです.

電源投入後の様子

電源投入後の様子を撮影しました.

方向特性

パンケーキ型GM管を利用しているためか,方向によって感度にかなり差があると思いますが, マニュアルにその辺の記載はありませんでした.
Polimaster PM1405 でも方向による特性の差がありましたので, 同種のパンケーキGM管を使っているRD1008も方向により感度の差がそれなりにあると思います.

2つの測定モード+BG差分計算

RADEX RD1008 には,MEASUREモードとSEARCHモードがあります.

MEASUREモード

γ線,β線(β+γ線のGM管の測定値からγ線専用のGM管の測定値を引いた物)が同時に計れるモードです.

γ線はSv/h単位で線量が表示され,β線は 1/cm2・min 単位で表示されます.
ベクレルは1秒あたりの崩壊数ですので,表示された数値を60で割れば,Bq/cm2になります.
(ただし,計測できた放射線数のBqになると思いますので,測定対象が放出するBq数(全ての放射線数)とは違いがあるかと思います)

MEASUREモードで,セシウム線源を近づけてみました.
β線の数値は比較的早く反応しますが,γ線はゆるやかに上がります.
今回くらいの線量率の変化では,左側のゲージもリセットされないようです.

アラートレベルを0.50μSv/hにしていたので,後半にアラートレベルを下げた様子も撮影しました.
RD1008のアラートは,特定の音が鳴るのではなく,放射線を検出したときにピッと音が出るようになるのが,アラートのようです.

MEASUREモードの注意事項

RD1008はβ線の線量率を次のように計算します.

このような仕組みなので,2つのGM管に入るγ線の量が異なると,正しい数値は表示されません.

ごく小さい汚染源を調べるときは,2つのGM管との線源の距離がずれることになりますので, そういった場合は不正確な数値の表示になります.

SEARCHモード

γ線,β線を区別せず,2つのGM管をそのまま使って感度を高めるモードです.
汚染場所を探したりする際は,こちらのモードが使いやすいです.

SEARCHモードで,セシウム線源を近づけてみました.
近づけ始めようとした瞬間から音ですぐにわかります.
MEASUREモードの時と比べると,即座に反応することがよく分かると思います.

SEARCHモードはGM管の保護シャッターを開けて使うものですが, 閉じた場合の様子も最後に撮影しました.
かなり線量率が低い=検出能力が低い,ということがわかります.

BG差分計算機能

RD1008にはバックグラウンドを測定し,それとの差分線量を表示する機能があります.

例えば,荷物の検査をするときなど,予めバックグラウンド線量を覚えさせておけば, 問題となる荷物によって,どのくらい線量が増加したのかが画面から読み取れるようになります.

メニューからバックグラウンドの設定を選び,最大で5回バックグラウンド線量を測定します.
1回あたり2分48秒かかります.
測定した値のうち,最小の数値をバックグラウンド線量として採用するようです.

バックグラウンド線量は,MEASUREモード,SEARCHモードそれぞれで設定することができます.

上記がMEASUREモード用のバックグラウンド設定画面です.
左側の画面は5回の測定が終わった状態です.

学習が終わると,通常の画面が右側のようになり,γ線では右上に BKG0.07 とバックグラウンド線量が表示されます.
γ線の線量表示は 0.01μSv/h となっているので,このときは BKG0.07 + 0.01 = 0.01μSv/h の状況であることがわかります.
ただ,小数点以下の四捨五入の影響などで,0.00μSv/hはあまりでないようです.(切り上げ?)

β線についても,同様にBKGの数値を学習して差分表示がされます.

上記がSEARCHモード用のバックグラウンド設定画面です.
左側の画面は5回の測定が終わった状態です.

SEARCHモードなので,カウント数が5つ並ぶだけになります.
MEASUREモードと同様に,通常の画面が右上のようになります.

γ線の測定

この機種は21秒毎に左側にでるバーが1目盛りずつ溜まっていき,8目盛りまでの平均を表示します.
そのため,十分俟っていれば,過去168秒の平均値が画面に出ます.

GM管のため,シンチレーション式などに比べると感度は低めですが, 測定時間が長いこともあり,表示される数値は低線量でもかなり安定します.

室内で,平均0.07μSv/hくらいの環境で50回測定した結果は次のようになりました.

0.072 ± 0.003μSv/h (±3.9%) (50回平均)

β線の測定

身近なところでβ線の測定をいくつか行ってみました.

サムネイルをクリックすると測定場所の写真が大きくなります.

測定場所 β線測定値 γ線測定値 コメント
五反田ふれあい水辺広場
植え込みの草の上
0min-1/cm2 0.11μSv/h β線はないようです.
γ線は0.11μSv/hを3回連続で示しましたが,その前に0.10μSv/hを示すこともありました.
同じ場所で,PA-1000 Radi は 0.098 ± 0.006μSv/h (9回平均) でした.
五反田ふれあい水辺広場
芝生の上
0min-1/cm2 0.11μSv/h ここもβ線はないようです.
五反田南公園 砂場
0min-1/cm2 0.10μSv/h 同じくβ線なし.
同じ場所で,PA-1000 Radi は 0.054 ± 0.011μSv/h (3回平均) でした.
玄関
0min-1/cm2 0.07μSv/h β線なし.
カーペットの上
0min-1/cm2 0.07μSv/h β線なしです.
昆布
6min-1/cm2 0.06μSv/h 乾燥昆布を測定してみました.
昆布にはカリウムが含まれているため,そのβ線を検出できたのだと思います.
6min-1/cm2が表示される数値の下限のようなので, このくらいがギリギリ検出できる限界のようです.
やさしお
14min-1/cm2 0.06μSv/h やさしおを測定してみました.
やさしおは,塩分の半分をカリウムに置き換えた塩です.
カリウムには天然の放射性カリウムが含まれるので,そのβ線を検出できたのだと思います.
昆布よりだいぶ強力なβ線が出ているようです.
鉛ブロックの上
0min-1/cm2 0.04μSv/h β線が明らかにない状態でゼロになるか,一応鉛ブロックの上で測定してみました.
当然,こちらも0表示になりました.
3月に使っていた吸気口フィルタ
47min-1/cm2 0.13μSv/h 花粉がキャッチできるフィルタを部屋の吸気口につけているのですが, 3月頃に使っていたフィルタを交換後保存しておいたものを測定しました.
結構放射性物質が付着しているようです.
Polimaster PM1405 で以前計測したときは,65.7min-1/cm2でした.
トリウム入りマントル
557min-1/cm2 0.43μSv/h 晴れなん堂さんから貸して頂いた時に,一緒に送って頂いたマントルです.
最近はトリウム入りではないマントルも多いようですが,これはトリウムが入っている物です.
かなり高い数値がでますが,キャンプの時とかはこれを普通に使っていたりしたことを考えると,ちょっと複雑な気分です.
ストロンチウム(Sr-90)線源
734min-1/cm2 0.08μSv/h β線のみを出す線源を,2つのGM管の真ん中くらいになるようにおいて測定しました.
γ線はほぼ変わらず,β線が大幅に増えています.
γ線が増えたのは,位置のズレや,制動放射(β線が他の物に当たったときにX線(=γ線と一緒)がでること)のせいだと思います.
セシウム(Cs-137)線源
414min-1/cm2 0.20μSv/h セシウム137線源を,2つのGM管の真ん中くらいになるようにおいて測定しました.
セシウムなのでγ線も増えますが,γ線が0.20に対してβ線はかなり高い数値になっています.

Polimaster PM1405 のレビューと同じような場所を測定しましたが, やはり身近な場所の汚染が少ないようで,β線はほとんど検出されませんでした.

以前よりゼロ検出が多いように思いますが,これはRD1008の検出下限が6min-1/cm2で, それ未満では0表示になるためだと思います.
Polimaster系と違い,最大でも21秒×8=2分48秒の平均値でしか算出しないため, 時間を掛けるほど小さい数値が検出できるというわけではないため,その差だと思います.

γ線測定値の比較

他の機種と表示値を比較してみました.

何回か測定した感触では,低線量でも数値は十分安定しているように思います.

測定値の実際の値の比較は別ページにまとめていますので,そちらを参照してください.
放射線測定器・ガイガーカウンターの測定値比較

個体差による測定値の比較

shinさんと晴れなん堂さんからそれぞれお借りできたので,この2台の測定値の比較を行いました.

2台の測定器を動画で撮影し,21秒毎に数値を読み取りました.
約2時間かけて測定を行いましたが,測定器の場所による影響を取り除くため,30分毎に2台の位置を入れ替えました.


元データ

2つのRD1008の測定値の差は「0.002μSv/h ± 0.002μSv/h」でした.
RD1008は,小数点以下第2位(0.00μSv/h)までしか表示しませんので,画面での表示範囲を考えれば個体差は無いと考えて良さそうです.

途中,下の方に飛んだ数値が出ていますが,このときは測定器が線量が変化したと判断し,統計をリセットしたようです.
どちらの個体でも起きていますので,放射線のランダム性のために起きてしまっているのかもしれません.
(低線量ではカウントできる回数が減りますので,誤ってリセットする確率が大きいのかも)

こちらのグラフからも,線量のばらつきが読み取れます.
±0.02μSv/h くらいの誤差があってもよければそのまま読み取れば良さそうですが, より正確な数値を知りたいという場合は,何回か測定して平均を取るほうが良いようです.
(0.1μSv/h以下の低線量での話ですので,もっと線量が高いところでは誤差は減るかと思います.)

まとめ

面倒な操作なく,単に置くだけでβ線が計れる使い勝手の良い機種だと思います.
β線の測定をしたい場合には,最適な機種です.値段も10万円を切っており手頃です.

γ線に関しても,0.1μSv/h以下くらいでは少しふらつきがありますが,数回の平均を取れば結構安定した線量率を読み取ることができます.
GM管を採用した機種の中では,サンプリング時間が長めのことも有り,ふらつきが少なく使い勝手が良いと思います.
(ただし,誤差を積算するタイプの機種に比べると,ふらつきは多めです.)

パンケーキ型GM管は結構原価もかかっているようですし,かなり大きいサイズのGM管を2つも搭載していることを考えると, これで7万円くらいという価格はコストパフォーマンスも良いと思います.
RD1503・RD1706についてはβ線を含めてしまうので,線量率は不正確になりがちですが,RD1008にはそういう問題もありません.

個人で購入できる価格帯で,β線の測定を行いたいという目的がある場合には,この機種がベストだと思います.

晴れなん堂さんからの購入方法

amazonの商品ページに出てこないという質問があったので,購入先について補足しておきます.

amazon の場合は, amazon.co.jpのRD1008製品ページ にいって,「新品の出品:○ ¥~より」 とあるところのリンクをクリックします.

そうすると全ての出品者がでてくるので,選ぶ事ができます.

あとは,Yahooオークションの出品ページでも買えるようです.

わたしが見たときは,Yahooオークションの方が安い価格でした.
(手数料の違い等でamazonが高めなのかもしれません)

また,今は楽天に出店されたそうです.
晴れなん堂 楽天市場店
から購入するのが楽かもしれません.

不明な点があれば,以下のメールアドレスに問い合わせてみて下さい.
harenanthropus@gmail.com

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