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ガイガーカウンター Polimaster PM1610 レビュー

ガイガーカウンター Polimaster PM1610 を たろうまる さんから無償でお借りすることができたので,使用感などをまとめてみました.

たろうまる株式会社について

お借りすることになったきっかけは広告の掲載相談でした.
Polimaster PM1610を専用に扱っている会社のようで,広告の件でメールを頂きました.
広告についてはお断りしたのですが(^^;,PM1610 のスペックを見ると結構良い測定器だと感じましたので, その辺の話をしたところ, たろうまる さんもPM1610の知名度が低いという悩みがあるとのことで,1ヶ月無償でお借りできることになりました.

たろうまるさんでは,機種を絞ってサポートに力を入れておられるようです.
出荷時に動作テスト,初期不良の場合は在庫からすぐに取り替え,購入1年間は送料含め無償で故障対応するそうです.
電話での質問対応,PC遠隔操作でのサポートまでしているそうで,使い方などに不安がある方にもお勧めできそうです.

Polimaster PM1610 について

PM1610 はガイガーミュラー管を使用した放射線測定器(ガイガーカウンター)です.

特徴としては,

個人線量計
常に持ち運んで外部被曝量を測定する用途向けの機種です.
音・LED・バイブレーションによるアラーム機能有り.
エネルギー補償有り
1cm線量当量 Hp(10) での測定ができるため,外部被曝を正しく測定できます.
小型&丈夫
バッテリーは内蔵充電池で30日.
PM1610 は IP65 ですので, 防水規格 IP表記に詳しく記載がありますが,
耐塵形(粉塵が内部に侵入しない)&噴流水に対する保護(いかなる方向からの水の直接噴流によっても有害な影響をうけない)
というレベルになります.
PC連携可能
PCから,線量率・積算線量をグラフで確認することが可能です.
誤差表示
ディスプレイに常に誤差が表示されます.
「今のこの数値は安定した数値か?」ということがわかるように誤差表示が付いています. マニュアルによると15%以下になってから数値を読むのが良いようです.
測定器にはどのくらいの時間で平均計算するかについて,固定のもの(Mr.GammaやPA-1000 Radiなど)と, 固定ではなくて状況に応じて可変のもの(その他大半?)があります. 可変の場合,どのくらい待てば正確な数値になるのかわかりにくいのが欠点ですが, この機種では誤差が出るので,その目安がわかります.

内容物

届いたものは次の写真のようなものです.

右下の写真は所有しているDoseRAE2と並べたときの写真です.

本体の他に,日本の電源プラグに合うUSB充電用のアダプタと,日本語マニュアルが付属していました.

日本語マニュアルについては, たろうまる さんが独自に作成したものということです.
1冊はかんたんに使い方を説明したもので,基本的な使い方,PCソフトのインストール手順がまとまっています.
もう1つは本家の英語マニュアルの日本語訳です.
(英語版のマニュアルはPolimaster PM1610ページの DownloadタブからDLできます.)

USB充電用アダプタも,本体付属の充電アダプターは海外使用で日本では使えないので,無料で付けているとのことです.

大きさはDoseRAE2より小さく,Nintendo DSi ほどの厚みがあります.
ポケット等に入れて使うのが良さそうです.

マニュアルにはクリップ付きのケースの図があるのですが, わたしの所に届いた物は付いていませんでした.
下の写真がそのクリップです.(マニュアルより引用)

たろうまる さんに確認したところ,出荷ロットによって有無が違うようです.
今はグレーのものなら付いているそうですが,欲しい場合は購入前に確認する必要があるようです.
(なお,結構力が強くてごつい感じのクリップなので,お出かけ時に使うのには向かなさそう,とのコメントを頂きました.)

画面表示

画面は次のような感じです.

左側が線量率,右側が積算線量の表示画面です.
右上に時刻が常に表示されています.

線量率の画面では,誤差表示があります. この数値が15%以下になったときに数値を読むと良いようです. 線量率が変化すると誤差の数値が上がり,そのまま待っていると徐々に誤差が下がります.

積算線量の画面では,分単位で前回のリセットからの経過時間が表示されます.

センサは液晶の下,2つのボタンの下端の真ん中あたりにあるようです.
裏面を見ると,センサー位置が示されています.
本体下側に横に円筒形のガイガー管が入っているのだと思います.
(写真はシリアル番号を隠しています)

電源投入後の動画(DoseRAE2・PM1610で比較)

DoseRAE2とPM1610を並べて,ほぼ同時に電源を入れてみました.

電源投入後,すぐに数値が出るのは良い感じです.
徐々に誤差が減っていくのがわかります.

カメラの都合で14分ちょっとで終わっていますが,14分ではまだ数値読み取りの目安の15%に達しません. 線量がかなり低いので,誤差が低くなるまでには時間がかかるようです.

線量率の測定

PM1610 は線量率を測定する際に誤差が表示されるのが便利ですが, 線量率の測定を一度リセットすることも簡単にできるようになっています.

リセットすると,誤差が99%になり,新しく測定を始めます.

DoseRAE2 にはこの機能が無かったので,この点は便利です.

線源の位置を変えつつ,リセットしてから誤差が15%になるまでどのくらい時間がかかるか測ってみたところ,以下のようになりました.

線量率誤差15%になるまでの時間
0.06 μSv/h約20分
0.8 μSv/h約4分
4.7 μSv/h約45秒

東京などの環境では,5分以上はかけて数値を見る必要があるようです.
(とはいえガイガー管を使った機種はどれも同じような感度だと思います.)

0.06μSv/h は上にあるDoseRAE2との比較動画の後,15%になるまでの時間を見ました.
0.8μSv/h,4.7μSv/h については以下のようになります.

0.8μSv/hでの測定状況

4.7μSv/hでの測定状況

反応速度

放射線源をそばに置いて反応速度を調べてみました.

大まかな感触としては,DoseRAE2と同じくらいです.
小型のガイガーカウンターなので,低線量時の素早い反応はできませんが,線量が高ければすぐに反応しますし, 誤差表示があるので数値の読み取りはしやすい感じです.

動画はいずれも長いので,適当に飛ばしながら見てください.

低線量の放射線源を近づけたとき

高線量の放射線源を近づけたとき

PCソフトウェア

この製品には標準でPCソフトウェアが付いてきます.

PCソフトウェアでできることは,PM1610の設定変更と,定期的に記録した線量率・積算線量の取得・グラフ表示です.
更に,個人毎に累積線量の履歴を管理できるようです.

メモリー内の履歴表示

付属のかんたん説明書には,接続して測定器のメモリー内の履歴を表示する機能の説明しかありません.

この機能を使ったときは,次のような画面になります.

画面の表示単位は mR ですが,こちらは設定で mSv に変更できるようです.後で気づきました.

最初の画面では長時間の履歴が出るのでグラフが見にくいですが,グラフの領域をドラッグするとその範囲を拡大できます.
拡大すると次のような感じになります.

メモリー内の履歴は保存できる量に限りがあります.
約8000回の履歴を保存できるのですが,標準では10分毎の記録なので,約55日分になります.
1分ごとに記録するように設定を変更した場合は,5日半になります.

ですので,長期間にわたって被曝量を管理したい場合は,こちらの機能の利用だけでは不十分です.

履歴の長期保存

履歴の長期保存をするには,以下のようにします.

  1. ユーザーを追加します.
  2. そのユーザーを選び「Assign Instrument」を押して線量計をひも付けます.
  3. 線量計を持って被曝量を測定します.
  4. 再度線量計を繋げ,「Detach」ボタンを押してひも付けを解除します.このときに線量計からデータを取り込みます.

AssignしてからDetachの間までの線量をコピーするので,ずっと使い続ける場合は,Detach直後に再度Assignするような使い方になります.

一度取り込むと次のように,線量率と積算線量のグラフが表示されます.

Detach・Assignを再度行うと次のようになります.
こんな感じで次々と記録を追加していけます.

先ほどの1日の詳細グラフの他に,日ごとに1ヶ月分,月ごとに1年分の表示もできます.
日ごとのグラフ画面は次のような感じです.

ソフトウェアで管理すると,1日単位の詳細な変化まで記録に残るのが便利ですが,Detach・Assignは少し手間だと感じました.
細かい変化まで全部残す必要が無い場合は,Excel等で記録を残す方が便利かもしれません.

日時積算線量差分
2011/07/02 21:000.250μSv
2011/07/03 21:000.808μSv0.558μSv
2011/07/04 21:001.234μSv0.426μSv

こんな感じで1日1回くらい記録しておく方が楽かもしれません.
線量がいつもより高かったような場合だけ付属ソフトウェアで詳細を確認し,原因を見るというような使い方も良さそうです.


また,デフォルトではメモリがいっぱいになると記録が停止する設定になっています.
PCに取り込んで使う場合はそのときに履歴をクリアすることができますが,Excel等で記録を取っていく場合はメモリがいっぱいになったら古いデータから自動的に上書きする設定にする方が便利だと思います.

設定の変更

付属ソフトで設定の変更もできます.
これらの設定は本体でもでき,本体でやっても余り面倒ではないので,使う場面は少ないかもしれません.

設定データの外部出力

このソフトウェアは,残念なことに履歴データを出力する機能がないようです.
線量率の変化をCSV等で出力できれば,GPSロガーのデータとつきあわせてマップ上に自動的に表示するなど,応用範囲が広がりそうです.

しかし,このソフトウェアはMySQLにデータを保存します.
MySQL上のテーブルは普通に参照できるので,こちらからデータを抽出することが可能そうです.
こちらについては後ほどもう少し調べてみようと思います.

バージョンアップで追加されました.(後述)

ソフトウェアのバージョン

付属ソフトウェアには2種類のバージョンがあるようです.

本体に付属してくるCD-ROMには,MySQLを使ったバージョンが入っています.
販売元サイトからダウンロードできるバージョンは,MySQLを使わないバージョンのようです.

どちらのバージョンでも同じように動作するようですが,上記に書いたようにデータを後で取り出したいという場合は, MySQLバージョンの方が取り出しがしやすそうです.
サポートを受ける際にもバージョンが違うと問題だと思いますので,付属の方をインストールするように注意が必要そうです.

トラブル

付属ソフトウェアを使うにあたり,2点ほど問題がありました.

1つめは,付属ソフトウェアを最初にインストールしたとき,実は上手く動きませんでした.
どうもMySQLへの接続ホスト名が localhost だとダメで,127.0.0.1 とIP指定だとOKになりました.
別PCでは動作したので,わたしのPC環境固有の問題かもしれません.

その際に遠隔操作でサポートして頂いたのですが,次のような感じです.

  1. メールで遠隔サポート用のソフトウェアのインストール依頼が来る
  2. ソフトをインストールして起動すると,IDとパスワードが表示されるので,それを伝える.
  3. サポートが接続しにくる.
接続後はチャットウィンドウが開き,会話はそのウィンドウで行えます.

今回は土曜日に特別に対応いただいたのですが,普段は電話や遠隔対応は平日のみ対応とのことです.
(メールについては土日でも返事しているとのことです)

2つめは,履歴を表示し,その画面をスクロールしているとアプリケーションがクラッシュする問題がありました.

こちらは,サポートから一度線量計のメモリにある履歴をリセットしてみて下さいとの回答があり, リセットすると解消しました.
最初に線量計のメモリに変なデータが入っていたみたいです.

付属ソフトウェアの新バージョン

付属ソフトウェアの新しいバージョンが出たとの連絡をいただいたので,確認してみました.
新バージョンで以下の点が変更になっています.

以下,新機能についての記載です.

Process機能

新バージョンでは次のような表示となります.
今まで左下のボタンは「Detach」でしたが「Process」に変わりました.

Processボタンを押すと,測定器のデータを読み取れます.
標準ではそのままAttach状態が続くので,読み取りが終わったら外してすぐに使えます. Attachし忘れることもありません.

Detachしたい場合は,Process時にDetachにチェックボックスを入れることで行えます.
(一人で使っている分にはDetachは必要ないと思います.)

Export機能

データをExportする機能が付きました.

1日単位,1ヶ月単位で,データをCSVファイルに出力できます.
ただ,ファイルの中味はCSVではなくて,セミコロン区切りです.

内容は次のような形式になっています.

Date;Time;Device;Type;Rate;DoseDelta;Dose;Channel
2011/07/11;00:00:48;PM1610 #XXX;Dose Rate;6.0000 uR/h;0.0000 uR;331.6200 mR;Gamma
2011/07/11;00:01:48;PM1610 #XXX;Dose Rate;6.0000 uR/h;0.0000 uR;331.6200 mR;Gamma
2011/07/11;00:02:48;PM1610 #XXX;Dose Rate;6.0000 uR/h;0.0700 uR;331.6900 mR;Gamma
2011/07/11;00:03:48;PM1610 #XXX;Dose Rate;6.0000 uR/h;0.0400 uR;331.7300 mR;Gamma

標準では10分毎の記録設定ですが,わたしの場合は1分毎に設定を変えていますので, 記録も1分毎になっています.
(1分毎にすると5日間程度しかデータを保持できないので,5日に1回はPCにデータを映す必要があります)

Typeは全てDose Rateのようです.
その右に,その時点での線量率,積算線量の差分,積算線量の数値が記載されています.
より高感度の機種を想定したフォーマットのためかもしれませんが,線量率の小数点以下と, 積算線量の小数点3桁以下は常に00でした.

こちらのデータを見ると,積算線量の差分には,加工していない値が入っているようです.
例えば次のような部分では,積算線量は揺らいでいますが,線量率は一定になっています.

2011/07/11;06:14:48;PM1610 #XXX;Dose Rate;6.0000 uR/h;0.0000 uR;372.8900 mR;Gamma
2011/07/11;06:15:48;PM1610 #XXX;Dose Rate;6.0000 uR/h;0.1000 uR;372.9900 mR;Gamma
2011/07/11;06:16:48;PM1610 #XXX;Dose Rate;6.0000 uR/h;0.1400 uR;373.1300 mR;Gamma
2011/07/11;06:17:48;PM1610 #XXX;Dose Rate;6.0000 uR/h;0.0600 uR;373.1900 mR;Gamma
2011/07/11;06:18:48;PM1610 #XXX;Dose Rate;6.0000 uR/h;0.0900 uR;373.2800 mR;Gamma

GPSロガーと組み合わせて使うなど,応用ができそうです.

積算値の表示精度

この機種は積算量を最初のうちは「1.234μSv」と表示していますが,10μSvを超えると「12.34μSv」のように小数点位置がずれます.
このため,小数点以下第3位まで積算値を知りたい場合は,10μSvを超える前に定期的に積算線量をリセットする必要があるようです.

積算線量のリセットは,SETTING→THRESHOLDS→DE→RESET DE,で行えます.

測定値の比較

他の機種と表示値を比較してみました.

一概にどちらかが高めに出るとか低めに出るというわけでもなく,差異があるようです.
ただ,全般的にPM1610の方が高い数値を示すケースが多い感じです.
(機種間の違いではなく,たまたまわたしが使用している測定器の個体差によるものかもしれません.)
エネルギー補償の有無による違い,低線量での誤差による違いなど,他にも原因は色々あると思いますが, 数値の差は結構あるようです.

測定値の実際の値の比較は別ページにまとめていますので,そちらを参照してください.
参考:放射線測定器・ガイガーカウンターの測定値比較

月間・年間の積算表示

PM1610を1ヶ月半ほどお借りしたのですが,その間の月間・年間の積算表示は以下のようになりました.

途中で1日グラフが抜けていますが,こちらはデータが溢れる前に同期をし忘れたためです.
デフォルトでは10分毎の記録なので50日に1回同期すれば良いのですが,設定を1分毎の記録に変えていたため,5日同期しないと溢れてしまいました.

色々テストで線源に近づけたりしていた影響もあるとは思いますが, だいたい月間0.05mSvくらいの被曝量のようです.

1年で0.6mSvくらいになる計算ですね.
自然放射線量が半分くらいだとすると,0.3mSvくらいが事故による外部被曝ということになりそうです.
わたしの場合,今の生活では外部被曝はそんなに心配する必要がなさそうです.

日本語対応(2012/12/16追記)

PM1610のファームウェアが日本語化されたようです.
以下の画面のように日本語画面になるそうです.

Ver1.4,Ver1.5 のファームウェアの場合は,有償修理扱い(3000円=送料・税込・代引料金込)でバージョンアップできるとのことです.
ファームウェアの確認は,Setting → Information で確認可能とのことです.

まとめ

1ヶ月半ほどお借りして毎日持ち歩いていましたが,非常に安定して動作しています.
小型なので持ち運びが邪魔にならないというのも良いですね.
DoseRAE2の方は誤動作でアラームになってしまう事もあったのですが,こちらは皆無です.
値段が違う点もありますが,安心して使えると感じました.

また,積算線量を管理するソフトウェアもしっかりしていますので,被曝量の管理に良いと思います.
ただし,積算線量を管理するのであれば,PM1610を使って他の線量を測ったりできませんから(高い線量を測ればその分ずれてしまう), 理想的にはPM1610と,空間線量用の測定器の両方があると良さそうです.

空間線量については,小型と言うこともあって,測定に時間がかかりますし,数値のばらつきもあります.
積算線量を正しく管理するという目的を考えても,空間線量も測定できますが,向いていないと言えると思います.

低線量が測定できる積算線量用の測定器は,DoseRAE2とPM1610くらいしかありませんが, DoseRAE2は誤動作や数値のふらつきという問題があります.
PM1610はそういった問題が無く,きちんと測定器のノウハウを持った会社が積算線量用に開発しました,という印象です.
線量率が上昇したときの危険察知&積算線量用としてベストな測定器だと感じました.

代替機貸し出しサービス

たろうまるさんでは,測定器故障中に代替機の貸し出しサービスを行っているそうです.
PM1610またはPM1621がレンタルされるとのことです.
積算線量の記録が途切れる期間を短くできますから,積算線量計としてPM1610を利用する方にとって非常に良いサービスだと思います.

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