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ガイガーカウンター Polimaster PM1203M レビュー

ガイガーカウンター Polimaster PM1203M を たろうまる さんから無償でお借りすることができたので,使用感などをまとめてみました.

たろうまる株式会社について

たろうまる さんから,色々測定器をお借りしておりますが, 販売機種を増やすということで,新しく PM1203M もレビューさせて頂けることになりました.

購入を検討される方は以下ページから問い合わせをしてみてください.
放射線測定器のたろうまる:問い合わせページ

Polimaster PM1203M について

PM1203M はガイガーミュラー管を使用した放射線測定器(ガイガーカウンター)です.

特徴としては,

ガイガー管を使用
線量率 H*(10) を測定できます.
測定範囲も0.1~2000μSv/hとかなり幅広くなっていますので,線量率が高い場所でも問題なく使えます.
エネルギー補償有り
1cm線量当量 H*(10) での測定ができるため,外部被曝を正しく測定できます.
小型
バッテリーはボタン電池(V357)で12ヶ月.
防水性能についての記載は特になく,触った感触でも防水性能はなさそうな感じです.
PC連携可能(ただし最近のPCでは困難)
PCから,線量率・積算線量をグラフで確認することが可能なようです.
ただし,古い製品のようで,COMポートに繋がるIRDAデバイスを手に入れる必要があり, 実際は使うのは難しいようです.
今から購入する場合は,本体のみでの利用を前提に考えた方が良さそうです.
積算タイプ
誤差の%表示はされませんが,Polimaster製品の積算タイプのロジックです.
線量率をリセットして測定するときは,円グラフに誤差が表示されます(100%~20%の範囲のみ)
感度は一般的なGM管の測定器ですが,この積算タイプのおかげで, 安定した線量率が読み取れます.

内容物

届いたものは次の写真のようなものです.

背面にクリップが付いています.

方向特性

方向によって若干感度が違います.
セシウムの場合は,0,662 の欄に該当しますが,GMかのの特定の向きだけ大きく感度が違います.
それ以外は優秀ですので,他の機種に比べても,比較的方向を気にせず使える機種だと思います.


※英語マニュアルより引用

画面表示

画面は次のような感じです.

時計右下のMODEボタンで,3つのモードを切り替えます.
各モードの最初の画面は以下のようになっており,左から線量率モード,積算線量モード,時計モードです.

時計左下のSELECTボタンで,それぞれのモードの中で更に画面を切り替えます.

基本的には,画面上のバーは線量率を表しており,アラーム設定値になると右側まで塗りつぶされます.
左側の円グラフは積算線量を表しており,こちらもアラーム設定値になると全部塗りつぶされます.

最大値がアラーム設定値なので,アラームが鳴らないように非常に大きな値を設定していると, グラフ表示がほとんどされないことになります.
見た目のためには,アラームの設定を行った方が良いと思います.

ただし,簡単にアラームをOFFにすることはできないので,映画館等,静かにしなければならない場所に行く場合は, 予め設定を変更しておく必要があるかと思います.
音量はあまり大きくありませんので,電車の中など日常的な範囲であれば鳴ってしまっても大きな問題は無いと思います.

放射線検査・治療をされた方などが近くにいると日常生活中でもアラームが鳴る場合がありますので, その点は注意が必要です.
参考:放射線治療・検査をした人の発する放射線 (2011/08/07)

線量率モード

線量率モードを一番よく利用することになると思います.

左から,線量率表示,メモリ機能,統計リセット機能の画面になっています.
2段目は統計リセット後の測定中画面です.

メモリ機能の画面にしてから,MODEボタンを押すことで,その場の線量率を記録できます.
(後でPCから閲覧できるのだと思いますが,後述の通りPCソフトウェアは試せなかったため,未確認です.)

また,統計リセット機能の画面にしてから,MODEボタンを押すと,今までの統計をリセットして, 新しく測定を開始します.
このときは,左の円グラフが誤差表示になります.
誤差100%なら真っ白で,誤差20%で1周になります.

ですので,この機能を使うことで,どのくらい待ってから線量率を読み取るべきなのか判断できます.
ガイガーカウンターにありがちな,数値がふらついて数値が読み取りにくいということはありません.
低線量では時間がかかりますが,こちらの機能でその場の線量率を簡単に測定できます.

また,測定後にMODEボタンを押すと,その数値をメモリに記録することもできます.

積算線量モード

左から,積算線量表示,積算線量の積算時間表示,IRDA通信の画面になっています.

積算線量は 0.001mSv=1μSv 単位になります.
東京など低線量の場所では,1日単位で見るにはちょっと粗いですが, 1週間ごとや,1ヶ月毎に確認するには十分だと思います.

積算線量時間として,何時間での積算かも表示されますので,割り算することで平均的な線量率も計算可能です.

時計モード

時計モードは普通の時計機能です.

線量率をメモリに記録したりする場合には,この時刻で記録されますが, 記録機能を使わない場合は得にあわせなくても問題はなさそうです.

全部で5画面あり,最初が時刻表示,次がアラーム時刻表示です.
1つアラーム時刻を設定することができます.

3画面目は日付(日月の順序です),4画面目は年,5画面目は分:秒,が表示されます.

放射線の検出音

放射線の検出音を出すことができます.
どのモードでも,MODEボタンを長押しすると,SOUNDの左に▲マークが表示され,放射線を検出するたびにピッという音が出るようになります.

高い放射線がある場所を探す場合は,こちらで探すことができます.

反応速度の動画を,検出音ありで撮ってありますので(後述),そちらを参考にして下さい.

線量率の測定

線量率は,Polimaster系の誤差表示タイプのロジックなので, 線量率が大きく変化しなければ,長い時間を掛けてより正確な数値を表示しようとします.

線量率が上がったときは素早く,下がったときはゆっくり反応します.

場所を移動したりした後に線量率を測りたい場合は, 線量率モードの3画面目にして,MODEボタンを押して統計をリセットして測ります.
この場合,左側の円グラフが徐々に塗りつぶされていき,全て塗りつぶされたときが誤差20%になります.
塗りつぶされるまで待って,数値を読み取るのが良いと思います.

円グラフが塗りつぶされるまで(誤差20%まで)の時間についてはマニュアルに記載があり, 以下のようになっています.

線量率誤差20%になるまでの時間
0.1~0.8 μSv/h300~360秒
0.8~8 μSv/h30~300秒
8~20 μSv/h5~30秒
20~ μSv/h5秒

感度

放射線検出音から計算すると,150cpm/μSv/h前後の感度があるようです.
GM管を利用した測定器としては一般的な感度で,Polimaster製品の同価格帯の機種と比べると, 値段の割には高い感度があるようです.
古い機種のため割安になっているのかもしれません.

反応速度

放射線源をそばに置いて反応速度を調べてみました.

Cs-137線源(2μSv/h)

Cs-137の密封線源を近づけてみました. Cs-137線源の時は1μSv/hにアラーム設定をしてアラームを鳴らしています.

10秒弱でアラームが鳴り始めます.

複数線源(4μSv/h)

複数線源時は20μSv/hに設定し,アラームが鳴らないようにしています.

近づけるとすぐに線量率が上がります.
遠ざけたときは,少しゆっくり線量率が下がっていくようです.
しばらくすると,統計がリセットされて通常の値に戻りました.

自己ノイズ

ガイガーミュラー管を利用した機種は,自己ノイズによって放射線が無くても少し線量がカウントされてしまうようです.

5cm厚の鉛ブロックで測定器を囲み,しばらく置いてから,どこまで線量が下がったかを確認しました.

結果,およそ 0.03Sv/h でした.

シンチレーションタイプの測定器では0.00μSv/hになりますので,0.02~0.03μSv/hくらい放射線量が高めに出るようです.
実際に測定結果の比較でも,そのくらい高めの印象があります.

0.1μSv/h以下など,低線量を測定する場合は,0.02~0.03μSv/hくらい高めの数値になると考えると良さそうです.

PCソフトウェア

PM1203M はPCとIRDA通信をして,記録した線量率などを取得できるようです.

しかし,古い機種のためか,Windows XP・Me・2000 対応となっており, COMポートに繋げたIRDAアダプタが必要なようです.

Windows7 64bit 環境ではインストーラが起動しませんでした.
Windows Vista 32bit 環境では,ソフトウェアはインストールできたものの, USBデバイスのIRDAアダプタでは通信できないようで,利用できませんでした.

測定値の比較

測定値の実際の値の比較・線量率の変動のテストを行いました.以下も参照して下さい.
参考:線量率の変動比較・第7回 (2011/12/18)

GM管のため,今回テストしたような,0.1μSv/h以下の低線量では若干高めになる傾向があるように思います.
Polimaster の誤差表示タイプのアルゴリズムのおかげで,表示される線量率は安定していて, 移動せずに特定の場所の線量率を測るのには非常に便利だと感じました.

まとめ

PM1203M は結構古い機種のようですが,そのためか比較的割安なのが特徴だと思います.

エネルギー補償が有り,Polimaster製品の積算タイプの表示で線量率が読み取りやすいのが特徴です.
PC接続は特に必要無い,という場合は,コストパフォーマンスが良い製品だと思います.

GM管の機種の場合,低い線量率に対して時定数やサンプリング時間が短すぎる傾向があり, なかなか安定した数値を読み取れないものが多いと思います.
積算タイプのこの機種は,統計をリセットしてからの積算で線量率を計算するので, そういった問題がなく,使い勝手が良いです.

積算タイプの測定器の中では比較的安価で,GM管としての感度も十分あるのが良いところだと思います.

代替機貸し出しサービス

たろうまるさんでは,測定器故障中に代替機の貸し出しサービスを行っているそうです.
PM1610またはPM1621がレンタルされるとのことです.
積算線量の記録が途切れる期間を短くできますから,積算線量計としてPM1203Mを利用する場合には非常に良いサービスだと思います.

たろうまるさんより,他で購入された方からの修理の依頼を受けることがあるとの話をお聞きしました.
その際,特にアメリカで生産された物は日本経由では一切取り扱えないそうです.
ポリマスター社の方で,アメリカ製のものは日本に入るべきでは無い,という考えのようで, 交渉したもののメーカー側に修理を受け付けてもらうことはできなかったとのことです.

普通は購入したショップなどで修理依頼になると思いますが, 放射線測定器の場合,結構いい加減な(?)ルートで売られる場合もありますので, そのあたり注意が必要なようです.

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