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放射線測定器 HORIBA PA-1000 Radi レビュー

放射線測定器 HORIBA PA-1000 Radi を購入したので,使用感などをまとめてみました.

購入

EMFジャパンに在庫がある,という書き込みを見て問い合わせたところ, 残念ながら在庫は切れて来週入荷の予約受付になります,という回答だったのですが, 今買えばPM1610と比較できる(^^; ということで注文しました.

そうしたら,運良くキャンセルが出たようで,すぐに発送できるとのこと.
早速入金したところ,翌日には発送されました.

HORIBA PA-1000 Radi について

シンチレーション式の放射線測定器です.
自治体などでも使われているようで,TVで PA-1000 Radi での測定風景なども見たことがあります.

特徴としては,

空間線量計専用
積算機能無し,アラーム機能無し,PC連携も無し.
高感度
シンチレーション式で,ガイガーカウンターに比べれば高感度です.
Cs137で2000cpm/μSv/hの感度で,エネルギーによって1000~6000cpm/μSv/hです.
エネルギー補償は無し
同価格帯の Mr.Gamma A2700 はエネルギー補償がありますがこちらは無しです.
生活防水
Mr.Gamma A2700 は生活防水が無く,こちらは有りです.また,若干Radiの方が小型です.
学習用!
明らかに教育用です.
実用的に使うための機能が何も無く,マニュアルなどの記載も教育的な内容が記載されています.
ただ,何も加工処理せず,10秒毎に過去60秒の平均値を出すだけなので,生の数値が見れるというメリットはあります.
また,放射線検知時にピッと音を出すことができます.(実用的な機種では音が出ないものもあります)

内容物

届いたものは次の写真のようなものです.

大きさは,DSiを少し分厚くしたくらいです.
そんなに重くは無いのですが,DoseRAE2やPM1610と比べると重みがあります.

学習用の設計…

マニュアルと,青い紙が同梱されていました.

青い方の紙には以下の記載があります.

「本機を10μSv/h(表示範囲)を超えるような場所では使用しないでください。
 本機は環境放射線(主に自然界からの放射線)の測定を目的に開発された環境放射線モニタです。
 測定場所における放射線量の安全性や危険性の判定には使用しないでください。」

学習用に作られているため,安全性確認には使わないで=そういった使い方で何かあっても責任取れないよ,ということのようです.
自治体などで使われていたりしますが,おそらく測定器が十分無いから使っているのだと思います.
この機種がそういった測定に適している,というわけではないことは知った上で購入した方が良いようです.

マニュアルは,半分くらいは実験の説明です.

実験1:放射線量マップをつくる
実験2:いろいろな物を測定しましょう
実験3:乗り物に乗って測定しましょう
実験4:遮へい効果の実験A
実験5:測定値の変動を確かめよう
実験6:水面の高さは?
実験7:遮へい効果の実験B
実験8:距離の逆2乗則の実験

実験には線源が必要なものも多くあるので,一般家庭でRadiを購入してもいくつかの実験は難しいと思います.

測定方法

この機種は他機種と違って,実用第一の作りではないので,測定器の性能を生かすためには, 自分で平均計算などをしなければなりません.

当サイトの 平均計算ツール(PA-1000 Radi用)かそのモバイル版を使って次のように測定します.
(モバイル版はiPhone/Android向けに作りましたが,動作が重いので,iPhoneでもPC版を使う方が便利かもしれません)

  1. 測定器の電源を入れ,35秒のカウントダウンを待ちます.
  2. 平均計算ツールページを開きます. 既に開いている場合は,「グラフを更新」ボタンを押してタイマーをリセットします.
  3. タイマーが1:00以上になるのを待って,測定器の数値を読み取り,測定結果に記入します.
    数値を記入してリターンキーを押すとタイマーがリセットされるので,再び1:00以上になるのを待って読み取ることを繰り返します.

測定器は過去60秒の測定結果を10秒毎に表示するので,統計を取るには60秒以上,間をあけて数値を読み取る必要があります.
60秒未満で数値を読み取ると結果が不正確になりますが,間が長くあいても問題はありませんので, 数値を読もうとした瞬間に表示が変わった場合は変化後の数値を読めば良いですし,1:00を大きく超えても気にせず数値を読み取り, そこからまた1分待てば大丈夫です.

5回以上測定すれば,誤差が表示されるので,それが満足行く値ならそこで測定完了です.
時間に余裕があれば,10回,15回と測定を続ければより正確な値になります.

測定値のぶれ

この機種は過去60秒の平均を10秒毎に表示するので,反応速度などはなく,常に60秒待てばその場所の数値になります.
ブザー音をONにしていれば,線量が上がったことは感覚的に把握することができます.

60秒毎の平均値は,結構ぶれがあります.
そこで,線量を何パターンか変えて,10分の間,10秒毎に数値を読み取ったところ,次のようになりました.

リンク先のグラフを見るとわかりますが,結構数値が変わります.

平均線量 平均値の推定値(95%信頼区間) 計算ツールへのリンク
0.055μSv/h 0.055μSv/h ± 0.001μSv/h (±1.5%) ツールで計測値を表示
0.357μSv/h 0.357μSv/h ± 0.003μSv/h (±1.0%) ツールで計測値を表示
0.644μSv/h 0.644μSv/h ± 0.003μSv/h (±0.4%) ツールで計測値を表示
1.070μSv/h 1.070μSv/h ± 0.004μSv/h (±0.4%) ツールで計測値を表示
1.999μSv/h 1.999μSv/h ± 0.007μSv/h (±0.3%) ツールで計測値を表示
3.063μSv/h 3.063μSv/h ± 0.009μSv/h (±0.3%) ツールで計測値を表示

測定値の比較

測定値の実際の値の比較は別ページにまとめていますので,そちらを参照してください.
参考:放射線測定器・ガイガーカウンターの測定値比較

反応速度

PA-1000 Radi は放射線検出時に音を出すことができます.
画面の表示は10秒更新・過去60秒平均なので,なかなか線量が変わってもわかりませんが, 音を聞けば線量の変化が感覚的にわかります.

線源を20秒毎に5cmずつ,徐々に近づけたときの反応状況を撮影しました.

β線を検出できるパンケーキ型GM管を搭載した, Polimaster PM1405 の動画もアップしましたので,こちらと比べてみると違いが分かります.

まとめ

現在DoseRAE2,PM1610と一緒に持ち歩いて何度か測定をしていますが, この機種であれば測定回数を決めて,比較的短時間で測定できるのがメリットです.

PM1610は低線量(0.1μSv/hとか)では誤差が減るまでにかなり時間を要します.
DoseRAE2はどのくらい待ったら数値を読み取って良いかがそもそもわかりません.

PA-1000 Radi はガイガーカウンターや,小型タイプのDoseRAE2よりは高感度のため, 0.1μSv/hなら,表示される過去1分間の平均値をそのまま読み取っても7%程度の誤差になります.
5回測定すれば誤差3%程度になるので,かなり数値としてはぶれを減らすことができます.
シミュレーションツールで2000cpm/μSv/hくらいでシミュレーションすると, 収束時間や数値のぶれ具合を確認できます.
参考:放射線測定器(ガイガーカウンター)の一定誤差での測定値のぶれシミュレーション

アラーム機能や積算機能が無いので,普段持ち歩いて自分の被曝量を管理したり, 危険を察知する目的には使えませんが,いろいろなところに出かけて線量を測るのには便利です.
現在比較的入手しやすい機種ですので,線量の測定を主に考えている場合は良い機種だと思います.